第1章 チェンバロ
「おーい」
私の目を覗き込みながら 手を振ってる。
『あっ えっと……』
「りさ子さんて彼氏とかいるの?」
『へっ? いっ いないよ』
「…ふーん なんかさっきエッチな顔してたから、誰か思い出してるのかなって」
『えっ?』
下着に紙幣挟んでるって言っただけで赤面してたくせに。
彼女?って聞かれる度に赤面してたくせに。
今ケロッとなんて言った?
『…翔陽くんのこと考えてたけど?』
「あ、おれ? へぇ、おれかぁ… …って、えっ!?おれぇっ!? えっ!?」
『…笑』
やっぱり巧みに誘ってきてたわけじゃないよね。
かわいいな 美味しそうだな 食べたいな…
キスくらい、いいかな。
いや、早すぎるかな…
部屋のドアベルが鳴る。
『あ、服乾いたっぽいね。受け取ってくる』
「あっ はい!」
服を受け取り、翔陽くんの着替えが済んだら、
車をエントランスに回してもらって、いざ、買い物へ。
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「ボテッガベニタ…? ここはいんの? おれこんなとこはいったことない…」
『ボッテガヴェネタ。ここ入りたいの。ね、お願い』
「いっ いややっぱおれ、ここで待ってる!」
『…んー、じゃああっちの店かな』
「チャネ… シャ…シャネル! 無理! 無理無理!」
『…笑 それかあっち』
「ルイスビトン! 無理無理!」
『…笑 それかあっちか』
「ドルセ…? えっ ドルガバ!?無理!無理無理!」
『じゃあここの、ほら、翔陽くんが知らないようなこの店が一番いいじゃん』
「ボテッガベニタは確かに聞いたことねーし… ちょっと安かったりすんのかな…
いやでも店構えとか店員さんとか… すげーこえーし…」
『怖くないよ。 丁重にもてなしてくれるよ。 翔陽くんで着せ替え人形して楽しんでもらうの』
「…へー着せ替え人形なら、妹の夏とやったりしたな。それなら…」
なんとか翔陽くんをブティックの中に入れることは成功。
あとは、彼らしくしっくりくる感じのを探すのみ。
しかしなぜボテッガ…