第1章 チェンバロ
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コンコンッ
バスルームの扉をノックして中に入り、
翔陽くんの濡れた服をひとまとめにして客室係に乾燥機にかけてもらう。
私の服でちょうどいいものはないし、
乾くまでバスローブ一枚になっちゃうけど
果たしてこの提案は正解だったのだろうか。
でもあのままブティックに連れて行っても怪訝な顔をされて
翔陽くんが嫌な気持ちになったかもしれないし。
デニムもびしゃびしゃだったから、乾燥には時間かかるかな。
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「な、なんかすーすーする…」
『あはは、それはごめんね。もうちょっと辛抱してて』
何もかもまとめて乾燥に出してしまったので、
下着もなくバスローブ一枚なのがひどく落ち着かないらしい。
「どこ買い物行くんすか?」
『ちょっと服をね、買いたいなぁって』
「へー」
『それからお茶でもしよっか まだ時間あるし』
「…あ、はい」
部屋に入ったら急に敬語になってる。
やっぱ落ち着かないかぁ…
そして私はバスローブ姿でもじもじする彼の様子に
たまらなく唆られてしまっている。
あー食べちゃいたい。
食べちゃいたいけど、それで終わりにしたくない。
…とか思ってる私がいたりして。
だって、翔陽くんって面白い。
少年のようで、真っ直ぐで、上を見てて、
もっともっとってどこか渇望してる感じがして。
普通に会話も楽しいし、
そのくせふとした表情が妙に、色っぽい。
想像してたモーツァルトの指とは程遠い
あどけなさ、無骨さがあるけど…
それがまたたまらなくくすぐるのだ。
私の身体を。 私の心を。
「…? りさ子さん」
ボケッとしてたら目の前に翔陽くんが立ってる。
さっきまでそこのソファに座ってなかったっけ。
あんまり近付くと自分が何しでかすかわかんないから、
少し距離を置くようにしてたのに。
そんな格好でこんなそばに来られると…
やだ… 触りたい
それ以上に触って欲しい