第6章 迷子
「確かに、そんな話してるんじゃない。って思うことも言うこともある。俺にだって。
そういう話のすり替え方をする人は五万といるからね」
『………』
「でも、一緒に会話してるんだよ。君が一方的に話の流れも決めて、完結してくわけじゃない。
君が言ったことに、そしてその奥にある汲み取れる限りの君の感情に、俺は答えるように話してるんだよ。
例えそれが君の望んだ返事じゃなくても、俺は俺の伝えたいことを伝えてる」
『………』
「だから君も逃げずに、迷い込んできな。話してるうちに、訳がわからなくなるかもしれない」
『………』
「それでも俺は受け止めるから。 これだけ言っても閉ざすなら、俺はそれ以上深追いはしない。
出ていけばいいし、まぁ、帰ってきたくなったら帰ってきてみればいい。
その時に俺はどんな対処をするかは保証はないけどね。 …以上、俺の話はとりあえずここまで」
…すでに、迷子なんだけど。
腹立つ!って飛び出せばいいのに。
とーるがそう言うなら…とか思ってる。
腹の底から、そう思っちゃってる。
意味わかんない。 なにこれ?
「昨日きたばっかだし、俺ん家だし。 とりあえず今日の朝食は俺が作る。
シャワー浴びてからでもいいかな?」
『…え』
いいけど…
え、なんだろうこれ。
よく、わかんない…
『うん、じゃ、私も一緒にシャワー浴びる。
コーヒーは淹れるよ、私のコーヒー、結構評判いいんだよ』
なんで、こんな、子供みたいに…
けろっとしちゃってるの、私。
「へぇ?それは誰に?お母さんに?」
『お母さんにも、お母さんの数々の友達、恋人にも、私と寝て朝まで時を共にした男たちにも』
「あはは!最後のは、家にあげれる独り身の人か、キッチン付きのいいとこに泊めてくれる人か」
『…? そうだけど?』
「全部が強烈でどれに言及していいのかわかんなくて笑えちゃった」
『え、お母さんは別に普通じゃん』
「いや、君の場合お母さんこそ強烈」
まぁ、そうだけど。
お母さんの作るご飯は美味しいんだよね、だからかな、若い男とかもほいほい釣ってくる。
だからかな、お母さんにりさ子の淹れるコーヒーは美味しいって言われるの、好き。