第6章 迷子
「おはよう、りさ子ちゃん」
『…ん、おはよ、とーる』
「…ちょっとこっちおいでよ。まだ早いし」
とーるは私を抱き寄せる。
「16と21か」
『…もーすぐ17』
「…じゃあ4歳差?全然、犯罪じゃないね」
『何歳さでも犯罪じゃないでしょ。別に合意なんだし。16だし。
私が12歳だったらいくら合意だとしてもそりゃ犯罪かもしれないけど』
「…まーそうだね」
『でもとーるはさ、ほんとに私に手を出す気なかったでしょ?』
「え?あぁ、うん。全く」
『それはわかってたよ、ちゃんと。でもなんでこうなったの?』
「いやあまりにさ、ほら」
『………』
「ギターを弾きながら歌う姿が綺麗で、それから歌が良かった」
『へぇ…』
「低めの声で、でも澄んでて。普段擦れたこと言ってるくせに、ピュアな感じがした」
『…何言ってんだか、そんなことない』
「…ふーん、ま、いいけど」
私がピュア?なわけあるか。
何言ってんだか。
「…りさ子ちゃんはなんで俺を受け入れたの?」
『とーる、面白いし』
「それあんま言われないな」
『とーるといると、わかんなくなる』
「えっ!?それ過ちってこと!?」
『え?いやそういうことじゃなくて、なんで私…』
ここにいるんだろって。
いやでもそれじゃ説明不足かな。
『とーるにはこんなに心許せてるんだろって』
「………」
『あ、身体も』
「…それ今言う必要ある!?」
『なんでそんなに反応するのさ。まさか引け目感じてるの?それなら私、今日出てく』
昨日の夜、ブエノスアイレスにいる間はうちにいればいいよってとーるが言って。
うん、そうしたいな。料理ならちょっとはできるよ。って言ったんだけど。
『そんな感じの人と一緒にいるのはやだな。寝るのも』
ほらね、やっぱり迷子になんてなれないんだ。
すぐこうして自分取り戻して、他の人突っぱねて。