第6章 迷子
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「…まいったな」
手帳とペンを置いて、ケースからギターを出して。
ぽろぽろと音を奏でた。
とりあえず、適当に、その時気持ちいいと思うように弾く。
コードに囚われず、探るように心地いい音を探していくのが私は好きだ。
あ、良いかも。って流れを見つけたらそれを繰り返して。
そうやってるうちに唇から、鼻から、メロディが流れ出したりする。
…歌、か。
そのまま変調してangel from Montgomeryを歌った。
Into the wild っていう実話を元にした映画の途中で、
ヒッピーというかそういう感じの女の子がギターを手に歌う曲。
映画よりもっと前に作られた歌だけど、私はその映画でこの曲を知った。
そして歌い終えて、伴奏も終えて。
一度水を飲もうとしたら、とーるがそう、つぶやいた。
参ったな、って。
ま、いいや。
なんか気持ちいいから、まだ歌おう。
それから数曲気の向くままに歌った。
英語の曲ばかりだったと思う。
それから、ふっと出てきておだやかな暮らしを歌った。
おおはた雄一の。
なんか好きなんだ、あの曲。
欲しいものは、おだやかな暮らし。
朝にそそぐ 暖かな日差し。
好きな人の手のひらがすぐそこにある、そんな毎日。
身体を売ったりするような16歳の私が言っても鼻で笑われるかもしれないけど。
その歌を歌ってる時、とーるが本を閉じたのがわかった。
歌いきったな、と思って。
ギターを置く。
水を飲む。
隣でじっと私を見つめるとーるには気づかないふりをする。
「ダメだよ、そんな曲で終わりにされると。 一緒に寝ようって言いたくなっちゃう」
『…は? なんでよ、好きな人の、って歌ってるのに』
「…好きになるのなんてあっという間の出来事だよ、出会ってしまった2人には」
『………』
「ほら、何か他のこと考えれるような曲弾いてよ。それで、終わりにして。
さっきの、energyとかって歌ってたみたいな感じの」
『enegy songみたいなの? んー 浮かばないけど。 あれいいよね』
「うん、とてもよかった」
『じゃあ…』
なんか頭のなか日本語の流れになってるし、