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真っ白でいるよりも 【ハイキュー】

第6章 迷子










「…迷子?」








とーるは運ばれてきたチーズたっぷりのピザを1ピース手に取る。
チーズがびよんと伸びる。 …美味しそ。

アルゼンチンはチーズを使った料理が結構ある。
歴史の中でイタリアと縁が深いらしい。









『…ここがどこか、いまがいつか、わかりすぎて。迷子になりたくなる』

「わざわざ?迷子に?」

『…そ、でも結局なれた試しがないな。お母さんがなんか、灯台みたいで。
それから自分も大概、ブレないし。 お母さんの血、継いじゃってるみたい』

「ふーん…まぁそれだけ突き抜けたお母さんのもとで育ってきたら、
その血を継ぐか、まったく継がないかのどっちかになりそうとか思ったりして」

『…まるで魔女だよ』

「…いろんな男と寝てても迷子にはなれなかった?
私なにしてるんだろうってならなかったの?16歳のくせして」

『全然』

「まー、そう言うと思ったよ」

『…でもね』

「………」

『でも、不意にわからなくなる時がある』

「へー。どういう時?」

『どういう時って別に大した時じゃないんだけど』

「………」

『…地球儀なんかみてると、わからなくなる』

「………」

『………』

「…世界地図は?」

『え?世界地図?』

「うん」

『…それはそんなにないかな。ふわふわはするけど』

「…ふーん」







私はアイスとプリンを食べながら、
とーるはピザを食べながら。

話したり話さなかったり。

高校卒業後、アルゼンチンにバレーしにきたんだって。
しかも、帰化して。
2年前。いまとーるは21歳。

なんかいろいろ、そうやってとーると話してると、
ふいにあれ?ってなることがあった。



ここどこだっけ?
あれ、とーるに会ったのって今さっきのことだよね?
私なにしてんだろ。 …って。






「それで?宿は決まってるのかな?」

『あ、うん』

「じゃあ、そこまでは送ってくよ。もう暗くなりはじめた」

『あ、うん。ありがとう』








チャラそうな印象よりももう、
この人の芯の強さみたいなものを垣間見てしまったから、
なんだろうな。信用する気持ちが勝ちつつある。










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