第5章 未来
「…え!ちょっと待って、なんで!?」
なんだか癪だなって本気じゃないけど、
小さく思って、今度はわたしが後ずさる。
たまに身体をくねってさせて、空いた背中をちらと見せながら。
誘われるように侑くんがこっちに向かってくる。
ソファの背もたれに軽く体重を預け、待ってみる。
ゆっくり近づいてきた侑くんに抱き取られる。
「…捕まえた。 …なんなん。アホちゃう」
『…あほ?』
「なぁ、夕飯用意してくれてんよな?」
『あ、お腹すいた?』
「うん、めっちゃ腹減った」
『うん、じゃあ…』
「手巻き寿司やったら、できたてがええとかないやんな?」
『あ、うん?』
「ほんならこっち先食う。 …今日仕事行く時、タートルネック着とったよな」
そう言って首に甘く噛み付く。
ちりりとした痛み。じわぁとした熱さ。
「せっかくやで、着たまま、な。むっちゃかわええ」
立ったまま、沢山のキスが降り注ぎ、
ソファに手をついて後ろ向きにされ、
裾をまくり、あれやこれや。
これやそれや。
侑くんにいいようにされる。
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「うっまー!手巻き寿司めっちゃうまい!」
手巻き寿司めっちゃうまい、ってそれは素材への褒め言葉かな?
実際素材とわくわく感で美味しさがなされてる一品であって、
侑くんに不満があるわけじゃなくて、単純にそんなことを。
『ほんと、手巻き寿司って美味しいね。
それに、侑くんの家の近くのスーパーの鮮魚コーナー、イカしてるね』
「そーなん?あんま一人で魚買わんもんで知らん!
なんや食いたなったら治んとこ行っとるしな」
そんな風に他愛無く話をしながら食事をしてると
時間が永遠に感じられた。
あっという間のようでいて永遠みたいっていうのはつまり…
すごく楽しくてそれでいて安心していたってことなのかな。
「あーーー!しもた!!まぁええわ、今渡す」
ごちそうさま、をしたところで侑くんが大きな声を出した。