第5章 未来
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残業もなく定時に上がる。
侑くんは20時ごろの帰宅だって。
鍵を渡してくれたので、食材を色々買って帰る。
ケーキは会社の近くにある美味しいとこで小さなホールケーキを買った。
ベリーのいっぱい乗った、
チョコレートクリームケーキ。
侑くんの家について、鍵を開けて……
…って私、昨日会った人の家でなにしてんだろう。
お誕生日のお祝いの準備?
あたかも、もうずっと前からお付き合いしてるみたいな感覚で。
侑くんといると楽しいし、時間が過ぎるのが早い。
けど、それとこれとは違うんじゃない?っていう種類のことな気がする。
なんかこのまま同棲しちゃいそうな勢いだ。
でも、この妙な安心感と安定感は何なんだろ。
そんなことを思ったりしながらキッチンで手を動かす。
…といっても、手巻き寿司にしたからそんなに手はかからない。
卵焼いたり、お吸い物仕込んだり。色々切ったり。
ご飯が炊けたらすし酢を合わせてパタパタしたり。
少しだけよそ行き顔のワンピースにでも着替えて待っていたいとこだけど、
あいにくここにはないし…ま、そんなこと考えたって仕方ない。
そうこうしてると、ドアが開く音。
「ただいま〜」
手を洗って,拭いて玄関に向かおうと部屋の扉を開けるともう目の前に侑くんがいた。
「何や来てくれるんかぁ〜そやったら玄関で待っとればよかった〜」
そう言って、紙袋をたくさん手に持ったまま私を抱きしめる。
…いただきものかな。お誕生日だもんな。人気選手らしいし。
私は、今日とりあえずで買うのはなって思って、
プレゼントは今回はとりあえず保留にした。
…何か探してみればよかったかな。
でもな、それもなかなか難しかったしやっぱりしっくりこないから。
これでいいよね。
一緒に食事を、楽しもう。