第5章 未来
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「遅なってしもてごめんな」
『ううん、楽しかったし美味しかったよ。ありがとう』
ケーキを食べて、お店の片付けを手伝おうとしたら、
明日休みの何人かでやるから仕事の人は帰るようにって言われて。
それがいつものやり方らしくて。
お言葉に甘えて残って片付けてくれるみんなと治くんに挨拶をして、
お代を渡して今、侑くんの車に乗り込む。
「寒なったなー」
『…ほんと、今日の夜冷えるね。お昼あったかかったから、放射冷却ってやつかな?』
「…な、やで、これ使て」
ほいっと渡されたのは今日買ってたミニブランケットの黒い方。
車っぽいのはどっち、って言ってたな。
『…うん、ありがとう』
「こんな時間になってもーたから、映画とか見れんなぁ」
『………』
「ほんまにただ寝るためにうち来るみたいになってまうな、いきなり」
『…あの、さ、侑くん』
「ぉん、なに?」
『明日はどんな予定ですか? …その、夜など』
「明日?何もないよ?誘われたけどなんや気乗りせんで断った」
『…じゃあ』
一緒に過ごしたい、とか…
そんなこと思うのも、伝えようとするのも初めてで…
『一緒に過ごせるかな』
「え? あ! そーやな! もちろん!」
運転しながら、一瞬こちらに顔をむけてにかぁって笑う。
「そう思ったら今日は大人しく寝れそうやな」
『…ん?』
「帰ってもそのまま寝ないかん時間やん?でもそんなことできる?って思ってたけど。
あーさっきいっぱいしとってよかったなぁ!」
そんな、あっけらかんとこんなこと言うんだな。
あーさっきいっぱい食べといて良かった!
あー昨日早めに寝ておいて良かった!
みたいな調子で。