第5章 未来
『いや、特に詳しくは知らないんだけど。世界の ってつくくらいだし。言ってみた』
「研磨くん、俺も会いたいな〜 いつ会えるんやろな〜」
『好きな子の彼氏なのに全然、負の感情みたいなのないんだね』
「負の感情か〜ないな〜 研磨くん痺れんねんな〜 おっかないけどな」
『…へぇ、なんかいいよね、そういうの』
「せやろ、ええねん。 ほんまもうちょい本人が器用になってくれたらな、
公認の浮気とか有り得るような感じなんやけどな。できんのやってな」
『公認の浮気』
「そういうんも、みんなが幸せならええんちゃうん、って俺は思うんやって。
ツムには理解でけへんらしいけどな。理解できる?」
『え?』
「例えばツムが他の女と寝たり、デートしたりとか。
週に2日はその人ん家で過ごすとか」
『…え、あ、ちょっと無理かも』
「…やんな、そうやと思った。なら大丈夫やん?ツムのことよろしく」
『…ん?』
「価値観ちゅーかそういう話。大事やんな」
『あー、うん。大事、だろね』
「…なぁりさ子ちゃん」
『…んー?』
「今の時期って海苔農家何してんの」
『今時期はまだ種付してなくって』
「種付け?」
「なんの話してんのー?」
「種付けの話」
「はっ!?何言うてんの?どーゆーこと?」
「なぁ?りさ子ちゃん?種付けはまだしてへん言うてたんやんな?」
『…うん、種付は大体10月の半ば頃かな、解禁で』
「いやいやなんの話?」
『…あれ?…っていうか今…』
何時だ?
ポケットからスマホを取り出し時間を確認する。
23:40。
…誰も何も時間のことを言わないのは、帰る人がいないのは、
きっと忘れられてないから、だよね。
私は無駄なことはせず、飛び入りで参加させてもらった身として、ひっそりとしてようっと。
「…?どないしたん?」
『ん?いや、親から連絡来てるかなって』
「…来てなかったん?」
『うん、大丈夫』
「なぁ種付ってなに?解禁って何?なんの話?」
『ん?』
「なぁ、サムとそういうことしてないやんな?」
『え?』
あ、種付けってそういうことか。
え、治くんと?
ないない、してるわけないじゃん。