第5章 未来
『未来って…』
「………」
『未来ってなんてゆっくりくるんだろう、って思う』
「未来?」
『うん、未来』
「未来…」
『 …椅子に座ってるのも、恋するのも、夢を見るのもまどろっこしい』
「………」
「………」
「…まどろっこしいって何やっけ」
「…やんな、俺もそれ思た。
なんとなしにはわかるんやけど、実際なんて意味?言われたらわからん」
『…じれったいの。あんまりゆっくりで、じれったい。待ってらんない』
「…じれったいんか」
「待ってらんない…?」
『…って何で私こんな話してるんだっけ? もーいいよ、忘れてくれ』
「寝たい言うたんやて」
「ほんでメシ食ってる時と寝とる時とあと、
クソしとる時だけ時間がゆっくりやないって言ったんやんな」
「クソちゃうやろ、排泄やでションベンもやろ」
「どっちでもえーわ」
「どっちでもええことないやろ」
「わかるやろが、どっちもやって、そんなこと」
「いやわからんやつもおるやんな」
『いやちょっと待って、もう、2人のこの会話こそどっちでもいいわ』
「………」
「…まぁ、ええか!サム、茶くれや!ほんでそれ飲んだら行こや」
あぁそうだった。
アイス屋に行く?ってなったのか。
でもアイス屋にすぐ行きたいわけじゃないしってなって。
待ってらんないなーって、寝たいなーって思ったんだ。
「…なぁりさ子ちゃんは、飯食うんは好きなん?」
治くんが熱いお茶を机に置きながら問うてくる。
『え!好きなの伝わってない?
好きだよ、でもあまりごちゃごちゃと凝ったのよりね、シンプルに凝ったのが好き。
だから治くんのお店はだいぶドストライクなんだよ』
「そっか、ならえかった。
なんやえらい斜めなこと言うてくるから、心配になったわ」
『斜め?』
「斜めやん、なんか、それ以外どうでもええ、みたいな」
『…そんな風に聞こえた?』
別にそんなつもりはないんだけど、
でも、そっか、それもそうかもしれないな。