第5章 未来
治くんは梅干しを取りに裏へ行った。
店用じゃないから、どこか別のとこに置いてるんだろ。
「…俺がほんまに略奪したと思った?」
『…え? ううん? 全然、大袈裟に言われてるんだろうなーって』
「やっぱそうやんなー 研磨くんから奪えるわけないんやって。
めっちゃ好きやったけどな、なんかだんだん、好きなままあきらめてくんやって。
あれなんなんやろ、多分俺だけやないと思うんやて。
まーそんなわけで俺はフリーやし、未練とかないから、このあとどっか行かへん?」
『いや、それにしても唐突で、そして軽い』
「だって、好みなんやもん、りさ子ちゃん!海の香りがする!」
『いや、しないから』
「なぁ、どこの人?どっから来たん?」
『出身は…』
「あー待って!当てたる。 九州やろ? 当ってる?」
『うん、あってる』
「宮崎か佐賀やな!」
『お』
「お!? ほんなら佐賀で!」
『おー、すごいね。何でわかるん?』
「当てずっぽうやで理由はない」
『いやそれもすごいな』
「やろ!ほんで俺、当てたでこの後デートしよな!」
にこにこと可愛い顔で笑う侑くんに、それは多少ときめいた。
デートしようって言って、こっちに笑いかけてくるんだもん、
こんな少年みたいな顔して。
「アイス好き?うまい店あんねん」
『あはは、それって写真撮られたとこの一つじゃないの?』
「しゃーないやん、あっこうまいんやもん。
別に元カノちゃうし。 りさ子ちゃんが嫌や言うんやったら他んとこ行くけど」
『別に気にならないけど、普通避けるのかなとか思っただけ』
「おおん、やましいこと何もしてへんし、そもそも恋愛なんて自由やん」
『ふーん』
恋愛、ねぇ……
そんなことより、治くん、私お腹すいたんだけど。