第4章 写真
いやでも。
彼氏とか彼女とかよくわかんない。
って言われたから、よくわかんない関係を続けてたわけで。
いや俺、そんな人と同棲するのとか…
男と女逆の立場だったら、周りが必死になって女を止めるパターンじゃん。
…でも手放したくないんだよ。仕方ない。
『白布くん、そういえばさ…』
シャワーを浴びて薄着でキッチンをうろうろしながらりさ子さんが何か言おうとしてる。
「………」
棚をガサゴソしていて次の言葉が続いてこない。
『…あ、あった。 カシューナッツ』
「………」
『…あ、そうだ白布くん』
「………」
『写真見て、決める。白布くんと同棲を始めるかどうか』
「………」
…なんだよ、さっきもう決定事項みたいのなってたのにな。
『あ、そういえばさ、フランス行った時にね』
「………」
『ちょっと良いお店入ってみたの』
「…服とかそんな興味ないよな?」
いつもサイジングばっちりで、綺麗にまとまってるけど、
ブランドものに興味のある人じゃない。
それでもスタイルがいいから、カジュアルな服をサラッと着こなせる、
何を着ても様になるタイプの人だ。
トップスの丈が短いなら短いでそれっぽいし、長いなら長いでそれっぽい的な。
『あ、うん、服じゃなくて。チョコレート専門店っていうの?』
「…へー なんて店?」
『なんだったっけ? 忘れちゃった』
「………」
『猛烈にチョコレートパフェが食べたくなって。 だからイートインで』
「…ふーん」
『結局パリにいる間毎日行っちゃった。すっごい美味しくって …それから』
「シェフが赤い髪の日本人だった? 妖怪っぽい」
『お!なんだ白布くん知ってるんだ〜
そうそう、一度シェフがお得意様に挨拶?みたいな感じで出てきて。
フランス語はあんまりわかんないけど、でもシェフの話し声を聞いてるだけでぶっ飛んでる人だってのはわかった。
聞けば若くしてシェフを任されてる凄腕さんらしい。
いや、ほんとーーーに絶妙で美味しいチョコレートパフェだった』
「………」
『…それでさ、』