第4章 写真
「…さぁ? 思い出すために使ってねーからな。思い出せねーわ」
…嘘だけど。
『なーんだ。一途な白布くんだから、いっぱい想っていっぱい眺めてくれてると思ったのに』
「…んだよ、女に浮気しておいて」
『…いやあれは浮ついてなんか全然なかったよ』
「…浮気じゃなくて本気ってか。 写真、家にならデータあるけど。 見に来る?」
『実習の準備するんでしょ? またでいいよ、またで』
「いや来いよ」
『………』
「………」
『オーケー、じゃあ夕飯も食べてく』
「…なんでそうなんのかはわかんねーけど。 まぁ良いよ、じゃ、それ飲んだら行くぞ」
すっかり冷めて酸味も増したコーヒーを
2人同時にくいっと飲み干し、
タイミングが揃ったことに笑ったりしながら。
喫茶店を後にする。
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『相変わらず綺麗にしてるね』
「…まぁ。 りさ子さんは? 部屋引き払ってたよな。 今実家?」
『今はお姉ちゃん家に転がり込んでるけど。 早急に住むとこさがなさいと。
実習始まってからのあの多忙な日々の束の間の自分の時間をさ、
お姉ちゃんと旦那に気を使いながら過ごすなんてイヤ』
「…それはお姉さんと旦那のセリフな気がするけど。
疲れてボロボロで多忙な医大生がいて、何するにも気を使う、的な」
『…ぼろぼろになんてならない!』
「…うち来れば? 荷物少ないんだろ、すげー減らしてたよな?旅出る前」
『およよ? そんな、気が引けます』
「…いろいろ都合いいと思うけど。
大学近いし、お互いに依存気質じゃねーから、上手く行くんじゃね?」
『…何がうまくいく?』
「共同生活が」
『あぁ…そうね、そうかも。性生活も』
「………」
『…そうじゃないの?』
「…はぁ とりあえず、写真見るだろ」
『…とりあえず、とは』
「とりあえずはとりあえずだよ。 あとお姉さんに連絡しとけよ。夕飯食ってくって」
『はーい』
自由気ままなくせに頭良いってずるいよな、って昔から結構思う。
そんなにたくさんいるタイプじゃないけど、
でも、たまに出会う度に思った。