第4章 写真
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喫茶店に入った。
2人ともコーヒーをブラックで。
『旅の最後はインドって決めてた』
「…へぇ」
『休学する前にも一度行ったことがあって、本当に生と死を身近に感じる場所で』
「…ふーん」
『初めて南インドに行ったの。前回は北だったから』
「いや北も南も俺には全然わかんねーし」
『きっとみんなが思い浮かべるのは北インド。
南インドは、そうだな… もうちょっと緩やかな感じ。
…ほら、あったかいし。 人が全然違う』
「………」
『日本人の女の子に会ったよ。綺麗な子。…歳は私の一個下で』
「へぇ」
『サーファー!って感じの健康的な子。ヨガのリトリートに来てた』
「………」
いやまさか、な。
『トリバンドラムに滞在して、それから一緒にケララへ移動した。
ちょうど、色々がしっくり来たから』
「…ふーん」
『ケララでアーユルヴェーダのクリニックに入るっていうからさ』
「あぁ、アーユルヴェーダ」
一応医者の卵だ。
現代医学だけじゃなくて、
世界の伝統医学の名前とざっくりとした思想?指針?みたいなものは知ってる。
人間の持ってるエネルギーを整えることに焦点をあてたような…
よくわかんねーけど、3つのエネルギーがどうとか…
いや俺、全然わかってねーわ。
『私も一緒に行っちゃったりして』
「………」
『いや、すごかったよ。ドクターの問診がまずすごい。
なんでそんなことわかるのよ、ってことまでわかっちゃって』
「………」
『で、ドクターが私にあったトリートメントを決めてくれて、
セラピストに施術してもらうわけなんだけど』
「………」
『いやはや、今でも続く伝統医療ってのはすごいね。とにかくすごかった』
「…伝える気皆無だろ」
『だってなんていうか、胡散臭いじゃん、言葉にすると。
興味持つ人にはきっと勝手に情報は入っていくし。
だから白布くんにわざわざ言葉にして伝えようとは思わない』
「…じゃあなんで話した?」
『話したかったのは、その子の話。 今のは横道』
「………」
『…その子がさぁ、なんていうかねー 生と死の象徴みたいな子だった』
「…は?」