第4章 写真
『ねぇ、今日はこの後用事あるの?』
「家帰って明日からの実習準備」
『…そっかー まぁ、そうだよねー』
「…大丈夫なんすか?」
『何が?』
「ブランク」
『それは、やってみないとわからない』
「………」
『じゃあまた明日、大学病院で』
「…どっかでコーヒー飲んでかね?」
『いいけど、準備は?』
「春休みもまじめにやってたからな、数時間削られても平気」
『おー、医大生の鏡! よっ! 白布くん!』
「…やめろ」
一度、名前で呼んでくれって頼んだことがある。
ヤってる時に苗字で呼ばれるのってなんか、変な感じがしたのと。
それから小2の頃から大学3年でこの人に出会うまでの13年間、
片思いをしていた初恋の相手もいつまで経っても白布くん呼びだったから、
なんか、どうしても思い出しちゃって。
別に思い出して苦しいとかじゃないけど、
ヤってる時とかふとした時に重なるのは不義理な感じがした。
罪悪感っていうか。
──『なんで?なんで白布くんじゃだめなの?かわいい苗字よね、私好き』
何がどう可愛いのかは絶対聞かねー。
『しらぶ らぶ らぶ。 名前にラブがあるなんて、かわいい』
「…クソ」
『愛ちゃんとはわけが違うよ、しらぶってほんと可愛いと思う』
「もーいいわ。今のナシで」
『いいや、詳しくお聞かせ願いたいところですねぇ』
そこから根掘り葉掘り誘導尋問。
俺は割と耐えれる方だと思うんだけど、
この人には歯が立たない。
気が付けば色々と喋ってしまっていた。
『白布くんってほんと、一途なんだね。そんな感じしてたけど』
「…うるせー」
好きだけど、関係持ってるけど彼女になってくんないあんたにそれ言われるとしんどいわ。