第3章 幼少期20〜
023
人の死って呆気なく、あっという間に来てしまうものなんだなぁ…
ぼうっとそんな事を考えつつ朝の日差しが入り込む部屋の中で瞼を開く。ううん、どう言う状況だこれ。
確かに僕はミニマムな自覚はあるけど、座ったまま眠る黒羽に抱えられているんだ?
そもそも僕はいつ寝たんだろう?
抱えられたまま変な体勢で寝てたせいか若干身体が痛い。抜け出せるかなと思ったけど…毎日いつの間にか僕より先に起きてる黒羽が寝てる顔は貴重だなと顔を覗き込んじゃうよレア過ぎる。
「何してるんだ阿呆」
「んぎゃっ」
心底呆れたトーンで背後から雹牙のツッコミもとい脳天チョップを食らって勢いで転がり黒羽から離れた。
見られてたとか阿呆扱いされた羞恥とか色んな意味で心臓ばっくばく。
どうどうと馬を宥める様な掛け声アンド頭わしわしされてるけど扱い!!雹牙の僕の扱い!!
「…あれ…私寝てましたか?」
「黒羽おはよう」
「井戸で顔洗ってこい」
思わず雹牙とチラリ。視線を交わしたけど黒羽なりにやっぱりショックだったんだねって。
ふと
部屋に敷いてた筈の理兵衛殿の布団が彼ごと消えてて二度見。ばっしばしと雹牙を肩を叩きつつ出てくる言葉が言語になってない。
泣き疲れて寝落ちる前にあった記憶ではまだ理兵衛殿の亡骸はあったよね?!
「落ち着け」
「んぶっ」
「お前達が寝てる間に丹波が持ち出した。彼奴が経を読んで自分で見送るんだろうよ」
「……そっか」
側近としてずっと供に在り、一番信用してた人だから尚更
てかお経読めるんだ…色んな発見と悲しさと虚しさで感情が混ざって酷い。
落ち着けと突っ込まれた時ぺしりと顔に当てられたものに注目すれば折り畳まれた文で…
ああ、文机にあったやつ…動けるうちに書いたであろう理兵衛殿の遺書だ。
「見ても良いの?」
「お前宛だろう…何つー顔だ。元々俺達に何か遺す方が変だろうが」
「ほんと変なとこで忍精神。おのれ戦国の時代……!!」
伊賀のごく一部と僕の感覚だけがオカシイの解ってたつもりだけど何だかイラッとするな!!
やり場のない憤りを抱えてゴロゴロしてたら顔を洗ってスッキリ顔の黒羽も戻ってきたおかえり!!
そしてすっと、転がる僕の横に座り頭を下げる黒羽ぎょっとした。僕がその場で正座するくらい。