第3章 幼少期20〜
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雹牙が昌幸殿にヘッドロック食らってたのは何で?と黒羽に聞けば、任務が早く終わって戻ったのは良いけど居るはずの僕は不在。昌幸殿の顔は知ってたので僕の所在を問うたの良いけど神経逆撫でする様にとぼけられたのだそう。
きっと丹波君の様な態度だったのかな…?雹牙がイラッとする反応ってそれしか思い浮かばない。
まだ反抗期真っ盛りの思春期な年頃だからね。忍だけど。二度言うよ?一応戦国の世の忍だけど。
伊賀の頭領を始め面白いイレギュラーが多いったら。
「理兵衛殿に何の用だったんだい?昌幸殿」
「まあ、理兵衛殿に頼まれ事があってねェ。報告だよ」
「……伊助君が来るんじゃなく?」
わざわざ真田の殿様が来る案件だったの?今まで伊助君を連絡係にしてやり取りしてただろうに急にお偉いさんが来る理由がよく分からない。
そう考えてる間で何か感じたのかくしゃっと困った様に笑われたらなあ…
僕の年齢ではまだ早いって事だろうか。頭をポンポン撫でて完全に子供扱いだからねさっきから。
「そんじゃあ理兵衛殿、後は伊助に…それと」
「?」
奇術師って言われるとどこぞの世界のピエロだけど、この世界の昌幸殿はとてもマジシャンっぽい。今日来たばかりなのに帰る支度をして、何か不都合があったのかなと思ったけど。ここに寄った方が次いでだったとか…
まあ、それも方便だろうと思うと食えないお方だ。
昌幸殿の後に続こうと立ち上がる信之君を片手で制する昌幸殿に、ご子息本人も首を傾げちゃったけど?
「親父殿?」
「妙案、と言っては何だがせがれ殿。お前さんの堅物さを解すにここが最適だと思うんだがどうだい、暫しここで厄介のになるってのは」
『は?』
その場全員の声が重なって聞こえたよ?僕これから夕食の支度をしようと思ったのに何て爆弾発言。
信之君連れてどこか向かう最中だったんじゃ?と零すけど顔がまぁ楽しそうで…確信する。絶対思いつきだこれ。
一同ポカンと、空気が固まったのを余所にスパンと勢い良く開け放たれた襖の先に今帰ったって感じの丹波君。「居たのか」って昌幸殿に、完全に丹波君にもオフレコだったの?