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淡藤の夢

第3章 幼少期20〜


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「では、二人は…」
「生きてはいる…と言いたい所だが。
何せ相手が相手でさァそう易々と手放しちゃくれないだろうねェ」
「あの性悪さはこちらも理解しております。ですが私は余命短いこの体たらく、長も私の分まで任務を請け負っている状況故に手が足りません」

以前、伊賀から年端もいかない兄弟が連れ去られた。弟は歩き始めて間もなかったが婆娑羅持ち。
しかし兄の方は力に恵まれずどちらかと言えば病弱。貧しい村の出で口減らしの為か共に深い森の中に置き去りにされていた所を長が連れ帰っていた。
兄の方は齢5つ程、弟はまだ這って動くのがやっとと言う幼さだったが兄は幼い弟を必死に抱えて離さなかったのを思い出す。

伊賀の長や私。彼らを引き取った忍の庇護の下、生きる為に忍の技を学ばせていたのですが
まさか力を妬んだ里の内部の者によって人買いに売られるなんて盲点でした。
内部の膿を少しずつ搾り出していた中での手酷い裏切り行為。その者の始末はしたものの売られた兄弟の行方は掴めず困難を極めた為に長は交流のある大名へ助力を求めた事で各地の大名と縁が結ばれたという。

私も初めは長の破天荒さに戸惑ったものの、それも最早いい思い出です。

「私が生きてるうちに取り返せたら良かったのですが」
「気が早いこって、早々にくたばる気かい?」
「あの子と此処で過ごしているお陰か予想より長生きはしていますよ?」
「竹中の嬢ちゃんねェ…織田と斎藤家の事については聞いてはいたが。知らされた時は化生の類かと疑ったもんだ」

すっかり痩せて骨張った腕を眺めつつ、昌幸殿の軽口に思わずふっと息が漏れた。初めは誰もが彼女をそういった目で見るでしょうね。
それが分かるからこそ父親の処遇は彼女の意思に委ねたのですが…

あの子は優しい。
この乱世の世では生きにくい程に。

「ところで昌幸殿。ご子息とは信之殿で?」


「はぐれたなんて嘘を言って…」意図的に彼女を遠ざけた旨を問えば何とも照れくさいような困ったような笑みでまだまだ甘い子だと。
この方も長に感化された一人なのですが軍師の本質は変わってないので裏無しに行動はしないでしょう。半兵衛殿を知っていた事を考慮すれば目的は信之殿と会わせる為か

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