第2章 幼少期10〜19
僕の知らない内に爆弾おじさんみたいな得体の知れない人物が居るかもしれないし、彼からは死角となる部分で短刀にそっと触れれば
ふうっと軽く息を吐いた男は片眉を大袈裟に上げて少しおどけた笑顔を見せた。
「そう警戒しなさんな。以前ここに甲賀の男が来ただろう?あいつの主人だよ…竹中半兵衛殿?」
「伊助殿の?……あ。真田の?!」
「ご明察!神童とは勝るに劣らぬ嬢ちゃんだ」
「僕のこと知ってるじゃないか」
これだから軍師系は!!僕の素性を察した上でしらばっくれるとかタチ悪い。
伊賀のイレギュラー忍の存在のお陰か信長公とも交流があるとは聞いてたけど…
まさか直々に真田昌幸殿が尋ねて来ると思わなかった…心臓に悪いなぁ
腹の探り合い的なものは身体の元の持ち主とは違って苦手なので軽く自己紹介をし、どう言った用件か尋ねればちょっと考える素振りを見せた後で丹波君と理兵衛殿に報告があると。
「ええと、僕に伝言とかは…やっぱり駄目か」
「恐らく嬢ちゃんに言ってもピンと来ない内容だろうよ。未だ不確かな要素もある…なら理兵衛の耳に入れて置いた方が良いと思ってなぁ
頭領殿は忙しいんだろう?」
頭領……あ。丹波君の事か!こっちにいる時ただの気さくなお父さんだから感覚狂うんだよなぁ…
確かに丹波君忙しそうだし、真田に害が無ければこの人も悪手は打たぬまい。僕を攫っても価値は無いしとどうぞと招けば一瞬拍子抜けな顔をされたけど。
腹の探り合い苦手なんだってば!必要だったらやるけど今そんな必要無いし!
案内しながら屋敷に戻れば、誰が来るかは察せてなかった理兵衛殿が呆気に取られた様に目を丸くして…
「昌幸殿…?貴方が態々来るとは。伊助で良かったのでは?」
「貴殿らの探し子の事だからねぇ、伊助には引き続き探らせてはいるがお前さんの顔も見たかったんでさァ」
「まさか単身で?」
「倅も一緒だったんだが、ここに来る途中ではぐれたものだから…半兵衛殿。済まないが探しに行って貰えるかな?」
「ええええ?!」
早く言って欲しかったな!?ここらで迷子になったら土地勘無いと山を降りるしかないし罠もあるよ?
「早く言って」と叫びながら外に飛び出した僕の後ろ姿を、昌幸殿が不敵に笑って見てたとは思いもしなかったけど。