第2章 幼少期10〜19
「帰蝶ー」
「なあに?」
「……纏まるといいねぇ」
僕達小娘には口出し出来ないだろうけど、せめて良いとこに嫁ぎたいよね。大体察してるのか真っ赤になって俯いたけど…
下からのアングルなので表情丸見えです可愛いなあ。帰蝶の方も信長公を良いなと思ってた証拠。
んふふふとほくそ笑んでたら顔を真っ赤にした帰蝶にべしりと殴られた。照れ隠しは可愛いだけだよ。
さて、いつまでもこのままで居ても仕方がないので…向こうに居た時に出来なかった事を帰蝶に見せようと、よいせと起き上がる。
厨に何が残ってたかな。
「重と…いいえ、もう半兵衛と呼んだ方がいいわね」
「そうしてくれると助かるよ」
名を一文字受け継ぐのは意外と重いものだね…分かっていたと思ってたけど、最近になってしみじみと思うよ。
…故に尚更父の名を継ぐ気は無くなったんだけど。
気分転換はどうかと聞けば頷いたけど何するのって?まあ来てみれば分かると厨に連れ出せば
信長公に頼んで作って貰ったものが色々と揃う厨はさぞ物珍しいだろう。
「貴女料理するのね?」
「自由にしても咎められないのはいい事だよね。何か甘味を作るから手伝ってね」
帰蝶の好きそうな味…プリンなら食べやすそうかな。雹牙に頼めば冷やして貰える…って口にしたら頬を抓られるから言わないけど。
保存のきかない食材は新しく農民の子から頂いたのでさっくりと砂糖を煮詰めてカラメルにし、容器は湯呑みでいっか。
カラメルの次にプリンを流し込み、蒸してから「冷やして」と雹牙に差し出したら無言で頭頂に手刀を食らった。痛い!!
「〜〜〜〜っ!」
「フン」
鼻で笑いつつ器を受け取って冷やし始めるその猫みたいな態度どうにかならない?僕って主だよね?
媚びろと言わないけど言葉のキャッチボールを願いたい!!黙ってるのも悔しいからカウンターで脇に一発食らわせて貰ったけど筋肉で硬いよ悔しいな。
「あら、美味しいわね」
「口に合って良かった」
忍と主人のど突き合いって普通なんだろうか?
彼等と関わってると主従って何だっけと改めて考えるけど…
まいっか。害は無いし。
近々理兵衛殿の顔を見に行こう、そう決心しながらプリンを匙で掬い口に含んだ。