第2章 幼少期10〜19
「い、市姫ぼくしんじゃう…」
「ねぇさま、ねぇさま」
「あはははっ!」
ちょ、丹波君ウケてないで助けて?婆娑羅込みでぎゅうぎゅう抱き着かれてるんで若干苦しい。
這いよる混沌様まで使って全力で甘えてくる市姫の様子を見てしまったと後悔。
最近ずっと仕掛けの支度してたからマトモに構ってやれてなかったね!僕のおばか。
信長公は市姫が寂しがってるの知ってて連れてきたんだね!?
市姫を小脇に抱えて部屋に戻ってきた信長公は各々を見渡したあと、膳の前に座り市姫を呼ぶ。
顔を上げてからおずおずと僕から離れ信長公の膝の上に飛び乗った。
だけど、横に来いと言わんばかりに横のスペースをべしべし叩いてるので、苦笑いしながら自分の膳を抱え移動し丹波君や理兵衛殿から食事の感想を聞きながらの食事は…
やっぱり皆で食べるのが一番美味しいなあとしみじみ思ったとさ。
「重虎、少し良いか?」
「あれ?丹波君見回り?」
実家との派手な喧嘩をする為の仕掛けをどうするか思案していると既に外は真っ暗で…
夜更かししたら黒羽達に怒られると片付けをしていれば背後から掛かった声の主に驚く。
普段の飄々とした気配が全く感じられない、いつもと違う様子に姿勢を正せば目の前にどかりと座り、手で口を覆って黙り込んでいる。
珍しい…何かあったんだろうかと思案顔の丹波君を見つめていれば。意を決した様に深い息を吐き僕の目を真っ直ぐ見る。
「アイツに…理兵衛には言うなと言われてたが。飯の時に咳をしていただろう?」
「喉…痛めてるんじゃないの?」