第1章 幼少期〜9
「強い婆娑羅を有しその上頭も回る。お前が男だったらどんなに…」
また始まった…僕が男だったら話。
ほんと女を下に見過ぎてて母が逆に哀れになってくるけど、父も父故に母も母だった。父に愛されたくて従っているのが見え見えだから…
女として子供を産む道具だと言い切る母を見習いたくないからある意味この境遇と言うのは恵まれているのだろうか?反面教師で。
僅かに眉間に皺を寄せ、少しうんざりする気持ちを振り払い。
もう父の小言が始まって、前に進む話も進まないから直接美濃の蝮殿に詳細を聞いた方がいいなこれ。
今は兎に角性別がバレなければ良いのだからと言い捨てて部屋を後にすれば。言い足りないのか父の怒鳴り声が聞こえたけど知らない。
文句を吐くだけだなら他所で吐いて欲しいよほんとに。
僕の性別を知っているのは両親のみ。女中には父と母が僕の身体に傷があるから見るんじゃないと人払いしてるみたいで…
通りで着付け方とか、着たまま指導なのかなって首を傾げたこともあったけど意外と女中は口が軽いんだよね。
あの後、道三殿に直接話を聞きに伺ったら、同年代の娘や息子の相手をして欲しいという申し出に苦笑い
三大梟雄と言っても子を思う父なんだなぁ、うちと大違い。
帰蝶と出会った時は、内心見抜かれ無いかと冷や冷やしたけど、まだ幼いうちは結構誤魔化せるみたいで。問題は成長期が来たらだよねぇ…ほら、竹中半兵衛の女体化ってモデル体型とかスラッとしたイメージあるからさ。
そんなこんなで帰蝶達と対面してから数ヶ月。
家は相変わらず、両親も弟を見てばかりで僕に声を掛ける時は見破られて無いか否かの確認程度。
いい加減少しうんざりして気分転換に暗くなった時間に屋敷を抜け出し、馬を走らせたら絶賛迷子になりました。