第2章 幼少期10〜19
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無性にやりたくて仕方が無かったんで有り合わせでやってみたかったんだ。ストレス発散だと思えば大丈夫大丈夫。
そう心の中で言い訳をしつつ、使わない時間を女中さん達に聞いて城の厨をお借りしているんだけど…
「……穴が開きそう」
「視線如きで死なん。放っておけ」
事の発端と言うのは、黒羽と雹牙がうり坊を獲って来たので折角だから何か作ってみようと思ったのです。
今の時代馬の餌とされる大豆を少々と、産みたて卵を貰ったら益々作りたくなって。
包丁で肉を叩き、挽き肉状態になってから…石臼で粉にした大豆を混ぜる。
うん。ハンバーグです。
僕1人じゃ少し大変だし、この時代の厨をマトモに使うのが初めてなもんで火起こしとか手伝って貰ってるんだけど。
いやあ、何か女中さん達からも色々お借り出来たんで有難いと思いつつ焼く前までの下ごしらえをしていた所に通り掛かったのが信長公でした。
興味を引いたの?何作るんだって?
再現度は低いかもしれないけど、僕の時代にあった食べ物を…と言った直後に。
どっかりと。休憩用に持ってきて背後に置いてた腰掛けに座られてしまった。しかも手元ガン見だよ信長公ぉぉ…
そして信長公がここに居れば、必然の様に来てしまった市姫は彼のお膝の上。目をキラキラさせた顔で…興味津々で見ている!!
その珍妙な光景に女中さん達も気付くの当たり前なので、お姉さん達も混ざって何を作るのかと出入口に群がって来てしまった。
なんだこれ厨の人口密度が高い。
フライパンの代わりに釜で焼いてるんだけど。底の面積があまり無いから平たい鉄板みたいなの欲しいなぁ
もっと気軽に火を起こせる様に薪じゃなく木炭があってもいいし。
視線を紛らわす様に黒羽と雹牙にぽつぽつと零しながら、テキパキと焼く作業を進めていれば。ふと、調味料はどうしようかと考える。
塩はあるけど、胡椒ってあったっけ?
やばい。失念してた。
……まあ、塩だけでいいや今回は。味が着いてたら今は大丈夫。
何かタレやソースがあればな、作ろうかなと悶々と考えていれば。黒羽が動揺したような気配に気付いて振り返った。
「黒羽?」
「いえ、何か見てはいけないものを見てしまった様で…」
「んん?」