第1章 幼少期〜9
「早いね」
「お前…どれだけ美濃を探したと…!」
「ご無事で何よりです」
静と動とはまさにこの事かな。
反応がもう彼等らしくて弾ける様に笑えば、呆れを含んだ深いため息を吐かれてしまった。
元気そうだって?だって、まだ初日みたいなものだけど実家よりずっと息苦しくないもの。
「何その荷物?」
「丹波様からですよ、餞別だそうです」
昨日丹波君が帰ってから「行くならコレ持ってけ」って押し付けられたの?
一体何を持ってきたのかと思って包みを受け取れば割と重く、しかも細長い。
市姫を降ろしてその場に座り、包みを開けばなんと言う事でしょう…いや、間接剣だよ。新しい武器ですよこれ。
「どうしたの?これ」
「相模の婆娑羅屋には良い鍛冶師がおりまして、貴女が伊賀から美濃に帰った後に丹波様が謝礼として依頼されていたのです」
「謝礼なんて…」
僕自身、充分過ぎる程貰っていると思っているのに。
かと言って無下に出来ず、礼を言えば黒羽に苦笑いされたけど、無表情の雹牙に貰えるもんは貰っておけとか言われた。君達ってなんと言うか…ほんとに忍?
ガチガチの忍精神の持ち主だと父親2人から聞いてるけど実際そうでもない?と疑問に思ってしまった。
忍にしては結構柔軟な反応をしてると思うんだけどなぁ…
お茶でも飲んでいくかと誘えばこれから任務だそうで、合間に来てくれたのかとお礼を言えばまた来るとその場からスっと消えた。
「うーん、忍者凄い」
「ねえ、さま?」
「ん?」
さっき聞き間違いかと思って気にしなかったんだけど、ねえさまって僕の事か!!
僕はいつから君のお姉さんになったのか分からないんだけど、昨日今日の流れで急に姉扱いは戸惑いを隠せない。
もしかして重虎って言い難い?元服は元の本人同様に半兵衛を名乗るつもりだけど、そっちの方が呼びやすいかもなと思案しつつ。
市姫。僕は君のお姉さんじゃないよ?と目線を合わせて聞けば
姉さまなんだと言い張られてしまった…。
信長公ヘルプーー!!