第1章 幼少期〜9
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「とら、さま。ね、さま」
「はいはい、待ってね市姫。今終わるから」
昨日は今までに無いくらい狼狽えまくったけど、何だか丹波君の推薦で奉公と言う形で市姫の面倒を見る事になった。
しかも女だって公表した上で、この時代での男の仕事を任せて良いと…
男の仕事って何だ?と思ったけど。政務は勿論、武将として出陣するのも可能で…ようは好きに動いて良いよと言う何て自由な職場。
まあ、うん。10とかで嫁に行くのが当たり前な時代だしね。家同士の関係を持つ為に輿入れされる事も無いから正直ホッとしたと言うか…
信長公はまだ当主に着いておらず、現在の当主は風前の灯と言った感じで床に着いているのだと言う。
病なの?治せる可能性もあるからと信長公に診ていいか聞いたけど暫し無言の後、何もしなくて良いと言われてしまった。
「流行り病……なら隔離してる筈だし」
何があったんだろうねーと引っ付く市姫を見ながら首を傾げれば、真似をする様に同じくコテりと首を傾げる市姫天使か。
昨日、奉公が決まって直ぐに部屋を用意して貰いそれからずっと市姫と一緒にいる感じ?
…乳母とか世話役は居なかったんだろうか?って真剣に考えるも信長公が敢えて話さないなら時を待つしか無いのだろう。
流石にお世話になる信長公に隠し事は出来ないなと思い、丹波君達と同じく僕の前世からの身の上を説明したけど。
すんなり納得されると何だかこそばゆい…丹波君から伊賀で僕がした事を聞いている風だし、納得する理由は同じなんだろう。
こうもあっさりと理解者として認めてくれるの嬉しいし良いけどスムーズ過ぎないかと心配になるのは、若干警戒心が芽生えてるのかなぁ
ある意味実家での出来事がトラウマになってる可能性が高いし
ふと、市姫が顔を上げて…どこをじっと見てるの?中庭の方なんだけど若干視線が上?空?
「おきゃくさま…」
「え」
市姫がそう呟いた直後に近付く気配に驚いた。察知能力が高過ぎでは?
ああ…覚えのある気配に警戒はせずにそのまま縁側に移動すれば。2人の友人が中庭に降り立った。