第1章 幼少期〜9
「もう良い、出て来い丹波ァ!」
「丹波君?!」
信長公の、呆れの混じった声で呼ばれた名前に一気に脱力した。絶対僕の事話してるよ信長公に。
前世の事とかは漏れて無いと思うけど、竹中の事とか僕がどこから来てるのか、何で家を出てうろついてたのかはまるっと伝わってるに違いない。
音も無く僕の横に降りて来た丹波君。笑いを堪えながら頭を撫でないでぇ!?
「いやぁ、悪い。こんなに狼狽えると思ってなかった」
「どう言う繋がり?」
「お前と関わった件でちょっとな…信長。話しても?」
「構わぬ」
「??」
サラッと教えてくれた経緯はこう。
嘘の任務で始末されそうになった2人の件と、あの時閉じ込める様に指示したのは信長公と対立していた異母兄弟。
信長公より年上だけど信長公が本妻の子故に次期当主確定だったけど異議を申し立てられ。
謀反の様な形で対立したけど伊賀の報復により相手は……まあ、始末されたんでしょう。
家督争いの次いでに伊賀もって事になった理由は、信長公と丹波君に交流があったから。
主従とかじゃなく普通に友人みたいな間柄らしい。そっか…イレギュラーの1人でもある丹波君が信長公に関わってたのか。
ううん、似たもの同士と言うか…ウマが合ったんだろうなあ。
「しっかし、よく生きてたな。竹中で起きた事は直ぐ知らされたがお前の居場所は掴めなかった」
「思ったより知らない地まで走ってたみたい…?一晩中必死に逃げてたし、火事場の馬鹿力なのか分からないけど」
「無意識に闇の婆娑羅で移動したとか?」
「……」
…ありえそうで何も言えない。
鍵開けの時もそうなんだけど、闇ならではの性質を少し変える事が出来るって知ってから色々試してみたんだよ。
扱い切れる自信が無かったのは色々除外してたけど…
あんまり身体に来そうなのは結核を恐れて頻繁に使いたくなかったから使わないだけで、無我夢中の時に発動する可能性を想定してなかった。
通りで…美濃からここまで近く感じたのは気の所為じゃなかったんだ。
僕の足が早かったんじゃない。無自覚で跳んだんだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……」
信長公の前だけどその場に突っ伏したのは言う迄も無く。丹波君の膝にもたれて少し拗ねましたとも。
あー恥ずかしい。