第1章 幼少期〜9
「え、あ。女の子……?」
「ふ…?」
僕の声に顔を上げた子供が此方を見る。僕と対象的な真っ黒な瞳と髪の色。
1歳か2歳くらいなのかな、身近に帰蝶くらいしか同年代が居なかったからこの時代での子供の年齢が読めない。未来より小さい筈だから仕方が無いけどこの世界の場合日本人の平均身長すら怪しいな。
女の子に近付き、1歩離れた所で座り視線を合わせてじっと見つめ合う形になってしまった。
1人で居る理由はその女の子座ってる地面で蠢いてる闇の婆娑羅で良いのだろうか…?
凄く見覚えがあるから少女の正体は察したけど本人とは限らないしね!!
似たようなイレギュラーが居ても不思議じゃないさと自分に言い聞かせつつ、抱っこしても大丈夫かな?嫌がらないなら大丈夫かね。
よいしょっと抱き上げ、あやしながら着物を見れば上等な布で出来てる……そして…
「〜〜〜〜〜〜〜〜……!!!!」
着物に木瓜紋んんんんん!!!
朝倉氏の豪族だった時に賜ったけど変形したやつだっけ確か。でもそれ信長公が当主の時だよね、そうだここは異世界でした!!
心の中で声なき悲鳴をあげて座り込んだのに驚いたのか、腕の中でもぞもぞと動いた市姫(確定)に視線を向ければ心配そうな顔をされている。
あれ、僕は懐かれた?子供って周囲の気配とか感情に敏感だからなあ…
「大丈夫。君のお家が分かったから」
「うー?にぃ…?」
「ん?まだあんまり上手く喋られないのかな。と言う事は1歳くらいかなあ…」
久作がこの頃にはもう僕が目に掛かる事は殆ど無かったから参考にならないし。
「君はどこから来たの?」
「…あっち」
見事に地面を指指した。完璧に婆娑羅の暴走で移動してるぅ!!
尾張はどっちだっけ…村の方から聞いた現在位置と、ここらを治めている大名は…あれ?
少し近くに小さな村があったので話を聞けば…
随分と道が逸れてたのか意外と近い位置に居る事が分かってしまった。
死亡フラグが乱立してて若干逃げたい。
かと言って市姫を誰かに託す訳にもいかないし嗚呼……
「ふぇぇ…」
「あぁ…よしよし。僕がおうちに連れてってあげるから…」
こうなったら最悪、市姫を返してから全力で逃げるのも手だよね!!ヤケ気味だけど忍アイテムの煙幕は1個だけ護身用に貰ってるから大丈夫大丈夫!!……多分。