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淡藤の夢

第1章 幼少期〜9



涙が出た。この世界に生まれてからずっと堪えてたものが耐えきれなくなって。みっともなく涙が溢れて止まらなかった。
まさか初めての理解者が忍の頭領。そしてその側近とご子息達。

黒羽も雹牙も僕が泣き出して驚いたみたいで、動揺しているのだろう気配を感じるけど。畏怖や嫌悪とかは感じられない事にまた涙が出てくる。

「しかし、お前の知識をあの家に埋もれさせるのは非常に惜しい。お前の親父は弟が元服すれば容赦無く寺や遊郭に売ってもおかしくはない態度だったな」
「グスッ……分かってる。元服前に逃げようとも考えてたよ」
「でもアテが無ければ野垂れ死にしますよ」
「……うん。戦える様にって修行はしてるけど想定外の事があったら…流石に男の力には負ける」

けど、逃げる以外に僕には選択が残されていないのも事実で…
あの家に利用されるなんて真っ平御免だから先の事は考える余裕が無い。
ああ、でも。話していくらか気分がスッキリしている様だ。何とかなるかもしれないと確信地味た自信が生まれている。

ふと、目元が冷たいものに覆われて驚けば丹波君が噴き出す様な声が。え、何、見えないんだけど。

「お前優しい所あるんじゃねえか」
「五月蝿い」
「雹牙く…雹牙?」
「……氷の婆娑羅を手で覆って冷やしているだけだ」
「おやおや……」

微笑ましいものを見るように大人2人が茶化してる声に酷く安堵感を覚えた。優しいなあと思わず僕も笑えば手が離され、むすーっとした顔の雹牙とにこやかに隣に座ってる黒羽の顔が見える。

「丹波様、提案がございます」
「おう、言ってみろ黒羽」

にこやかに尋ねる黒羽の提案と言う言葉に僅かに首を傾げる。何事かと少年の顔を眺めていれば、人って外見によらないね…穏やかそうな顔で凄い事を言い放ったよ。

「伊賀が後ろ盾になり、重虎殿に何かあれば容赦しないと文を出せば如何です?」
「黒羽。それを許可したとして、その事態に長は易々と動く事はできませんよ?」
「義父上、私達がおります」
「…ほう?」

ん?何か話が変な方向に…?

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