第1章 幼少期〜9
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最初の言葉が出るまで凄く時間が掛かったのは言うまでもない。未来から転生してきたなんて巫山戯てるのかと怒鳴られてもおかしくない状況なんだもの。
僕は確かに病気で死んで、生前の記憶もハッキリ覚えてるし親族や家族の顔も覚えてる。仲も良かったからずっと心の奥底で認めたくないと言う事と、家族を置いて逝ってしまったと言う後悔だけが逃避に追い込んでいたし気を紛らわす様に勉学にも励んだ。
─────たとえ性別を否定されようとも。
「……気付いたのは目が見え始めた時、僕が生前学んだ歴史と酷似していた家屋の造形、そして両親の着ている衣服から」
けして僕の世界の過去ではなく平行世界。
ゲームだの異世界だとかはこの場では言わないけど。オタ女子故にある程度の歴史の流れは把握してるし、この時代には無い知識だって沢山有している。
戦国時代は自分の居た世から300年以上前だもの。しかも有名な軍師だよ。成り代わりだよ。
流石に元は男の人だったと言うのは伏せるけど。
どうせここに居る間は逃げられないし、命は彼等が握っている。信じられないと、斬り捨てられても文句が言えない立場だから何とか言葉を紡ぎ出し、この世界に生まれてからこの10年の経緯を吐き出した。
あくまでも平行世界だと……
話を終え、正座をし俯いたままずっと彼等の反応を伺う。少ししか間が空いてないのに非常に長く感じる錯覚を覚え、瞼をギュッと閉じれば頭に置かれる温かさに思わず固まった。
「成程な。お前の異常とも言える知識の根源はそこか」
「……信じて、くれるの?」
「何の為にコイツらの手当てと看病、枯れた畑を見せたと思ってんだ。頭の中の情報を引き出すのに充分だったと思うがな。なあ理兵衛」
「にわかに信じ難いですが、実際に目にすると信じざるを得ないですね」
「それに、畑を見せた時に井戸の話を呟いてたのは聞き逃さなかったぞ。そんな事、齢十のガキが思いつくかよ」
「…………っ!」