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淡藤の夢

第1章 幼少期〜9



「大丈夫だ。
竹中が必死になって主君に隠してる重大な秘密を口外させたく無ければ大人しくしておけと言っておいた」
「明らかに脅しだね……」
「お前への処遇を少しでも改めるなら黙ってるってな」

まぁいい笑顔だこと…垣間見える忍らしさと言うか、忍としてやる事をやってる以外ただの気安いお兄さんだもん。婆娑羅者じゃないのに漂うチート感は否めないけど。
僕の隣に座り少年2人の顔を覗き込むけどその顔はお父さんらしい。同じ髪色の子は実子だったか。

「母親は?」
「俺が殺した。産んだ直後にコイツを殺そうとしたからな。こっちは闇の婆娑羅持ち故に村の衆に殺されそうになった所で拾った」
「……愛情は無かったのかい?」
「世継ぎの為。それだけだったからな」

何とも言えない事情を聞いてしまったけど内心に何で僕に教えてくれたのか、てか僕は何時までここに滞在するんだろうと首を傾げていれば、僅かな動く気配と呻き声に其方に視線を向けた。
ゆっくりと開く眼の色は丹波君と同じ髪や目の色とは違い宝石のように紅い。
その紅が此方を見た瞬間。目にも留まらぬ速さで刃が僕に向けられていたけど、隣の丹波君は片手で刃を持つ手首を掴んでいた。

全然動きが見えなかった。

「よう、思ったより元気そうだな雹牙」
「お…前!?」
「落ち着け。此処は伊賀だ…黒羽も少し前から目覚めているんだろ?」
「え」

起きて反射的に攻撃態勢に入るとか流石忍だなと感心しつつ、息子君…雹牙君を見ていれば現在の状況に少し混乱してるみたい。
そしてもう1人、黒羽君は僕と丹波君が話をしてるうちに意識が戻ってたらしい…全然気づかなかった。
静かに瞼を開けながらゆっくりと上半身を起こして丹波君を見る。
雹牙君はやっと事態を把握したのか渋々といった顔のまま布団の上に座ったけど。

お水を差し出せば一瞬訝しげな顔をされたけど、受け取って飲んでくれたって事は少し信用してくれてる?

「丹波様、お手を煩わせてしまった様で」
「コイツが協力してくれたお陰もあるがな」
「この方は?」

僕は何もしてないよー。鍵を壊したのと看病していたただの居候だよー。
誤解を招く言い方をするんじゃないと牽制のつもりで横に座ってる丹波君の脇腹に拳をドスドスと撃ち付けていれば、2人とも驚いた様な顔になってるし。
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