第1章 幼少期〜9
「信秀公に何かあった?謀反とか病気とか」
「………今は病床に着いている」
──────あれ。
何か違和感を感じてふと顔を上げると、丹波君が立ち止まっていて僕の様子をじっと見ていた。
不味い。余りにも安心しきって素を出し過ぎたかもしれない。
若干青褪めつつ小さく「出しゃばってごめんなさい」と謝罪し俯く。物の怪の類いだとか言われて殺されかねない時代なのに、余りにも異質な空気を出してしまっていた。
ぎゅっと目を瞑ったまま、立ち止まったままの丹波君からの反応を待つ。抱っこされた状態だから僕は逃げる事も出来ないし。
何か動く気配に、閉じた瞼を更にぎゅっと力を入れれば
頭の上の乗った感触に思わず肩が跳ねたけど。痛くない。
撫でられる感触にゆっくりと瞼を開ければに本気で困った顔の丹波君?
「お前。意図せずだったのか?」
「え」
「俺は『百地三太夫』と名乗ったんだが。お前は『丹波』と、名乗ってない名で呼んだよな?」
「……」
「次いでに言うと頭領とは一言も言ってない。臭わす言葉を用いたがな」
僕は馬鹿だねぇぇ……本当に抜けてるねぇぇ……
最初から不審がられてたんじゃないか。
上手く誘導されて…ないね。勝手に自爆してるね。気付かなかった僕の落ち度です。
自分の間抜けさに絶句してるんだけど。