第1章 1章 崩壊そして邂逅
「あァ?」
突然怪我をしていると言われて男は怪訝そうな顔をした。
「左腕の包帯に血が滲んでいますよ。」
そう言いながら深聡は男の左腕を指さす。
男はバツが悪そうに腕を隠そうとするが、バレている手前、隠すことを諦めた。
「シロさんが恩返ししたい様なので…ご迷惑でなければ手当てをさせて下さい。」
「アンタに手当てされる筋合いはねェよォ。」
「いえ、私もシロさんを手当てした手前、頻繁に通うことが出来ずお腹すいていないか心配だったのですが、貴方様のお陰で飢えを凌ぐことが出来たようなので、お礼をさせて下さい。」
深聡にじっと見つめられて男は断るに断れず、渋々と頷いた。
そうと決まれば、深聡は神社の石段に座り男も隣に座るように促す。
座るのを確認し、深聡は懐から白い手拭いと小さな巾着を取り出した。
そして、手拭いを膝の上に引くと男の左腕をその上に載せた。
「……ッ!」
一瞬男はたじろいだが、されるがままに大人しくした。
「極力気を付けますが、少し沁みるかもしれません。」
「あァ。」
深聡は優しく軟膏を男の左腕の傷に塗っていく。
「アンタはいつもォ、軟膏なんざ持ち歩いてるのかィ?」
手持ち無沙汰な男は、何となく尋ねる。
「はい。身近によく怪我をする人が居ましたから…
それに、小さな傷だと甘くみると後で後悔しますからね…。」
男の質問に答えながらテキパキと手当てをしていく。
「では、最後に…。」
そう言って深聡は男の首に何かを引っ掛けた。
「……?」
あまりにも自然な流れで、首に何かをかけられ男は動きを止めた。
「これで手当てはお終いです。周りを大切にするのも大事ですが、自分の身体も大切して下さいね。」
深聡は包帯を巻いた腕を両手で包み込むと、ゆっくりとその手を膝からおろした。
「…手当て、ありがとうなァ。」
深聡の少し冷たいが優しい手つきと、心配そうに訴える瞳に男は思わず素直に頷いた。
深聡は石段から立ち上がると手当ての様子を大人しく見守っていたシロの方へ近寄って行った。