第19章 アフター・ダンスパーティー
『……ちゃんとさ、その、籍入れる前から検査してたって事伝えた?』
「ん?そんな事言わないさ」
ふふっ、と即答した悟。撫でる手を止めた瞬間に「止めないで」と言って、私はゆっくりとしたペースで撫でる。ゆっくりと顔を上げた悟の左側、耳よりも上の髪をちょこちょこと撫でて。
「そんな事言っても石頭共になんだかんだ言って僕のせいにされるのがオチか、ハルカに非があるんじゃないかって思われるだけ。ハルカの事を悪く言う様なら僕自身の事よりもマジギレしちゃうよ?……だからって証明としてわざわざオマエが検査してってのも癪だし。
確かに子供は欲しいけれどさ、ムキになる程じゃない。デキなかったらデキなくて良いしね。やってみなきゃ分からないからやって、願わくば家族を増やしたいなって。
ま、僕は確実にオマエを孕ませる予定だけど」
じーっと見つめてくる悟。服装もあってどきどきするからその視線は止めて欲しいんだけれど。思わず撫でてた手を引っ込めてテーブルの上へと手を置いて。
口元に笑みを浮かべた悟は「でも、」と続ける。
「何度も死にかけるハルカだから。ハルカが生きた痕跡は絶対に残したいって僕は思ってるし、子供が生まれてしまえばそう簡単に離婚出来ないでしょ?僕はオマエが手に入るなら逃げらんないようにしたいのよ。だから可能であれば僕の子供を宿させたい」
『……それ、本人の前で言う~?』
かなり病んでる思考では?にこやかな目の前のグッドルッキングガイは中身が尖り過ぎてるんですけど…?
私の左手を悟は手に取って、微笑みながら薬指に軽く口付けた。その瞬間に私の心臓が跳ねた気がする。伏せたまつげが上がり双眼が私を見上げる。
「先に言っておくけれど……今度、オマエが死にかけるような事があったら。問答無用で孕ますから。妊娠したら種ありの証明になっちゃうよね?そしたら学校は中退だねー?」
上目遣いで双眼が細められて口元が遅れて笑ってる。
それ、は…困る。私に限らず皆命を張って日々戦ってる。私は人よりも死に近いだけで何度も奇跡的には助かってしまっているけれども。この先、危険な目に遭わないって確証はどこにもないのに。
『卒業後っていうのは…──』
「オマエがこれから先、生きてちゃんと卒業出来るか分からないのに?」
『……っ』