第3章 呪術を使いこなす事
ほら早く、と急かし、出ていく父を見て私は立ち上がる。
ふたりの居る場所へ寄れば悟が何かを手に持っていた。干物みたいな何か。
床のフローリングは隕石でも落ちたか、という穴が開き、石や土が上に乗ってる。
『……それは何?』
干物みたいなものを指すと悟は床の土や石を開けた穴に靴でがさつに戻しながら答える。
七海は眉間にシワを寄せ、壁に掛けてあったのを見つけたのだろう、箒で丁寧に戻してる。性格の違いだ。
「これは車の中で言ってた呪物。殺された人が相当恨んでたんだろうねー、こうなっても呪い続けてそこに住んだ人に怪我とかさせてたんでしょ。そこに相乗効果でハルカが住んでたから他所からも集まってくるし、知らぬ間に自宅で祓って、職場で祓って……ずっとボランティアしてたんだね~」
はい、七海。と渡された干物を嫌々持つ七海。良く見たら人の手首から上だ。
あー…だから手がいっぱい生えてきてたのかな。
悟が手でシッシ、と私を邪魔にする。
「ほらほら、キミは荷造りだよ~?片付けなんかしなくて良いからさー、ほっときゃ良いの!こっちは呪霊も祓って呪物も撤去したんだし」
『私の家なんですが?あっ、悟がやってくれる…と?じゃあお願いしますぅ』
後ろで面倒くさいと愚痴を零す悟の声を聞きながら、私は荷造りを済ませた。