第3章 呪術を使いこなす事
「……驚いた。ハルカ、母ちゃんと同じ事出来たんだなァ…、俺には見えねえけど、こういう仏様みたいな世界はやっぱりお前も受け継いでるんだなァ…」
その言葉は母も呪術を使っていたという事。
そして父はそんな母を見ていたという事。
『父ちゃん、』
肘まで盛り上がっていく肉を見て、私は父親の目を見た。
怒られるのを覚悟している。
『私、お婆ちゃんの所、行った。母さんの実家、春日の家に』
「…は?なんでだよ、お前は母ちゃんがせっかく…、」
『それで見えるようにしてもらった。
そして帰ったら、家の中がものすごい呪い……おばけがいっぱい居る。父ちゃん、多分それに腕やられたんだよ』
「……」
ドコン、ベキという床を振動させる音。きっと床をぶち抜いてる。床下収納で済む穴であることを祈りたい所。
ピギャア!という声が聴こえた、抵抗せずに祓われてくれる事も祈っておこう。
父親が倒れたまま気になってその方向を見ようとしたので、私は声を上げた。
『見えないままじゃもしかしたら死んでた!母さんは守るために私を見えないように、お婆ちゃんから離してくれたけれど、私はそれでも生きていく為にこれからは見なくちゃいけない!』
「けどな、ばあさん所…──」
『私はあんな鬼婆の言いなりの道具みたいな生き方はしない!』
心配そうな顔をした父は、少しだけ安心した顔で笑った。
『……今ね、一緒に来ている人達が家の床にいるおばけを退治するみたいだから、父ちゃんは家の外で待ってて。足も治ってるでしょ?』