第19章 アフター・ダンスパーティー
「わー!どうしよっ!相手も術師、全員の目を潰しに行くのは少しばかり苦労するんじゃないかな……会場のスプーン借りてえぐって回ろうかな~…」
『不穏な事言うのやめろー?褒めるなら普通にして欲しいわ、他人を巻き込むのは止めましょうね?』
流れるようにすっ、と携帯をしまった悟は口元に弧が描いてる。目元は見えずともなんだか雰囲気がいつもと違うのはおめかしをしてるからかな。
いつもよりも格好良い状態の彼がいつもの悟らしい微笑みを浮かべる。そう優しい表情をされたらさっきまでのふざけた言葉が無かったみたいで。
「凄く綺麗だよ、ハルカ……」
『ありが、と……そういう悟もいつもよりかっこよくなっちゃってさ』
お陰様でじっと見てられない。それがアイマスクしていても。アイマスクを貫通するイケメンって前代未聞だぞ、これは。
どきどきしてるから、思わず見上げた視線を少し降ろした。それでもぴっちりと決めた服装が視界に入って、しかもふわりと香るフレグランスがまるでフェロモンみたいで少し頭がくらくらしそうで。
「ふふっ……ありがと。さっ、会場に向かうとしましょう、プリンセス?」
……これ、アイマスク無しだったら即死だったろうな。ちら、と見上げてしまった視線を下げた私の腰に片手が触れ、そのまま自然と足が店舗の外へと向かってる。気が付けば悟にさり気なくエスコートされていた。
お互いの服装もあってなんだか"らしく"なってきたかも、だとか思っちゃったりして。
そんな考えをしてる自分にどんどん恥ずかしくなって片手で思わず額に手を当てる。プリンセスって、夢見る小さな女の子の考えじゃん…。
『急にそういう事すんの、やめて……、』
店の外で会場まで送ってくれる車を待つ。
私の腰に手を添えた悟の手が、悟側にぎゅっと引き寄せられ、互いの身体がより密着した。触れた所がらじわじわと自分と違う体温に侵食されてる感覚。ただ触れる、いつもの戯れよりも今夜は違う世界の感じ方をしてて、いつもの熱にときめいてる。
『そういうの、慣れてないんだからさ』
私はあえて手を繋がないようにと隠してた手を降ろして悟を見上げた。ちょっとだけ口を尖らせて彼は文句を言い始める。