第19章 アフター・ダンスパーティー
『目が、目がーっ!』
「ムスカワロタ」
塞いだ視界の外、斜め上の悟がくすくす笑ってる。
笑っとる場合じゃないんだわ、私としては…っ!今の笑ってる悟を直視したら良くて気絶、悪くて即死だと思う。
「ねえ、もしかしてハルカさぁ~…?この格好の僕がいつもよりも格好良くて見とれて……フフッ、照れちゃってる感じ?」
見えないけれども声が帰ってきたばっかりのあの愚痴ってる感じじゃなくて、楽しんでる。さっきまで疲れてたみたいなのに。
ぶんぶん、と首を振って否定しかけるも、こういうのは素直になった方が良いのかな、と思う所があったので控えめに一度頷いた。
「えっいや、どっちなのよ!?」
『早く…、早く着替えてっ!目が潰れる!蒸発するから顔に蓋でもしてっ!』
「ははっ!僕は鍋じゃないんだから蓋なんて出来ないよー?」
笑ってる声がする。トッ、と近付いてる足元からの気配。
ふっ、と急に耳に息が吹き掛けられてびくっ!と思わず身構えて、何事かと手を少し退けてしまった。
そこには余裕そうな表情で革製のハーフグローブを嵌めた片手をギチ、と僅かに鳴らし、でネクタイを緩めてる悟。
「僕に着替えて欲しいっていうのなら、オマエに脱がせて貰いたいな…?」
ふっ、と笑う口元を見てしまった。ちろりと舌先が見えて唇を舐めた後に引っ込む様子。わざとだ、これわざとやってる…!
『やだ!そのねっとりとした声もやめてっ!わざとそうやって……私の反応を楽しんでるでしょっ!?』
「うんっ!疲れが吹っ飛ぶくらいに非常に僕、楽しいです!」
『そういう所っ!』
にこにこしながら私の肩に両手をとんっ、と置いた悟。
フォーマル・マジックで目がやられそうだからと下げかけてた両手でまた目を塞ごうとしたら、素早くその肩の両手が私の手首を捕らえた。きゅっと、壁に優しめに押し付けられて。優しく追い詰められた私は背に壁を着けた。
……手袋越しに伝わる体温にどきどきする。
「隠さないでちゃんと見てよ、オマエの目には僕がどう映ってるの?」