第19章 アフター・ダンスパーティー
167.
ガタン!と握りしめていた手から滑り落ちた携帯がフローリングへと落下した音でハッ!とした。
すぐさましゃがんで手にとって立ち上がり、ちょっとキョトンとした悟に携帯を向ける。カメラを向けるとポーズをキメる遺伝子でも組み込まれてるのかってくらいに悟がフッ、と笑ったのでカシャ、カシャ、とカメラモードで二度写真を撮った後、ポケットにしまう。
……別にいつもよりも格好良くきまってる悟の写真を後でこっそり壁紙にしようだなんて。そんな事は思ってないし…決して!
…設定したらロック掛けよ。
そんな事(カメラ)をさらっと無意識にやってて、ポケットに突っ込んだ時点で正気に戻る。これは悟による無意識の攻撃を受けているぞ、私。
ぶわっと顔に熱が灯り、私は悟の側にずんずんと歩み寄った。あまり直視は出来ないのだけれど見ないとこれは出来ない…っ!
ちょっと何が起こったのか分からずとりあえず笑みを浮かべた感のある、悟の微笑み。それさえもどきどきとさせてきて平常心じゃいられない。
「ちょっとちょっと~ハルカどうしちゃったの?」
アイマスクをぶん取り、標的を定める。困り眉にふわ、とちょっと優しげな笑み。その寝相にあまり負けないサラサラヘアーの頭へと両手でアイマスクを広げ、ズボッ!と被せた。手で抵抗しようとしたけれど仕上げだ!と言わんばかりにグッ、と持ち上げいつものアイマスクスタイルに。
『こンの…っ!急に火力上げてくんな馬鹿っ!私を殺す気か!?』
「マジでどうしたの!?情緒不安定すぎてウケるんだけど?」
せっかく着けたアイマスクを取ろうとするから『ストーップ!』と叫ぶ。制止も叶わず、悟自らアイマスクを取るから私は両手で顔を隠した。あんたは瞳術使いのうちはイタチかっ!?見た者の精神をこうもかき乱して!
なんというか。フォーマルな姿の悟は強烈なくらいに好みの人になってた。
見た瞬間に心臓が大きく跳ねたような気がして、思わず体が固まった。目が離せない、離したくない程に見とれちゃった。それが好きな人、愛する人であるからこの感情をどう私の中で処理すれば良いのか分からない。
私、これまでの恋愛をした中でここまで好きってなった事ってなかったんじゃないかな?なんとなく好きだったような気がする、とかいつのまにか好きになってた、みたいな恋ばかりで火がつくみたいな事なんてなくって。