第18章 美術品のように愛でないで
「あれ、伊地知じゃーん!怪我したの?もう治ったー?」
「はい、お陰さまで……シーツ、ですか?」
シーツ。
悟はうん、と笑いながら頷く。ドア前でシーツを抱えながらに。
「汚れててねー、硝子居ないしハルカ忙しそうだし!」
「アッそういう………ほんっと五条さん達を邪魔してすみません…っ!」
何が?という不思議そうな顔をした悟が、伊地知と私を見つつ医務室内につかつかと入ってくる。何の用事?と思ったらそう言えばアイマスクをここでぶん投げてたんだった。
カーテンの下に落ちてたものを拾うと片手で器用にずぼっ、と被り、いつものように目元を隠す。
「これでよし!どう?ハルカ、男前になった?イケメン?呪術界のご指名ナンバーワン取ってるナイスガイ、そしてハルカ専用のスパダリになってる?」
ずいずいと屈んで迫ってくるので頬を手の平でむに、と押し返す。無限ならぬ有限での防御じゃ、こちとら。
『いつもの悟100%だから。忘れ物取りに来たんでしょ、怪我人じゃないならそのままUターンして下さいねっ!じゃあねー』
がた、という音と共に立ち上がる伊地知。いや、怪我人はここに居て良いってことで…!悟とは違うんだから…っ!
空いた片手で伊地知に手を伸ばしたも素早い動きの伊地知。彼は物凄い勢いでドア前まで駆け、くるりとこちらを見て頭を下げる。表情は物凄く気まずそうで……。
「治療ありがとうございました、本当に…本当におふたりの邪魔してすみませんっ!」
失礼しました!とドアを少し開け、そこからシュッ!と抜け出しそっと閉めていく伊地知。悟はきょとん、とした顔で口を開けていた。
「何かあったかオマエ知ってる?伊地知めっちゃ焦ってたけど…」
近付こうと迫って来るのも、人前でないのもあるから悟の頬を押すのを止め(今の悟の意識は伊地知についてだから私にいちゃつこうとしてないし)、私は椅子をくるりと回転させて机に向かって椅子に座る。
……座るとノーパンであることを意識するなあ…。
『多分察してるよ、伊地知さん。私の首筋の悟が着けたキスマークと、制服の乱れ、それに気が付いてた。それからいつもと違う個室の方から私が来た事とかね。
決定的なのは悟がシーツ汚したって抱えてる事じゃない?』