第18章 美術品のように愛でないで
「わざわざお呼びしてすみません。本当に軽めではあるんですが…」
片手を押さえてる伊地知を振り返りながらそっとドアに手を掛ける。悟が感情的になってガラスにヒビを入れたのがこっちからでも丸わかり。あとで割れ落ちないように粘着テープでも貼らないと余計な怪我人とか出る。
……その前に硝子に怒られるけど。
『いえ、放置して実は骨にヒビ入ってたとかもあるかもだし。呪力として蓄えられるし……色んな状態を集める事も出来ますから。ささ、中どうぞ、ドアのガラス、割れそうなんで気を付けて下さいね』
ドアを開けて電気を着け、中へと入る。失礼します、とドアに気を付けながら入った伊地知。
……椅子がドア前まで吹っ飛んでる、私が蹴ったやつだな…と、椅子を押しながら彼の脇を通って机に行き、書類を用意しつつ伊地知を振り返った。
彼は椅子に座る瞬間で、中腰の状態で何か眉間に皺を寄せている。
「あの……邪魔してすみません…」
私伊地知に何か邪魔されたか?と疑問に思いつつも中腰の伊地知の肩に手を置く。そのままゆっくりと腰を落ち着かせた伊地知は私を見上げていた。
手の甲に包帯が見え、それを外しながらに治療を始める。
『私、なにか伊地知さんに邪魔されたという記憶、全く無いんですけれど……、はい終わりです』
包帯を捨てよう、という所で伊地知がぼそ、と呟いてるのを聞いてゴミ箱から外れ、手前に落ちる包帯。
「制服の乱れ…、と首筋の……その、充血した所々の痕といいますか」
……昨晩の、という事にしたい。
口を開けた瞬間にガラッ、とドアを開けてくるシーツを抱えた悟。あっぶねえ!ヒビ入ってんだけど…っ!と注意する前に悟は開けたドアのガラスをじっと見て、そろそろとドアを閉める。
シーツをやや前側に抱えてるのは股間部分を隠してんだと思う。一度元気になったらそう引っ込まないもんだから。
アイマスクをしておらず裸眼のまま眉を上げて伊地知を見る悟。