第3章 呪術を使いこなす事
停車すると、前方の路上に5体の呪い。それらがこちらにのそのそと歩みを進め始める。
シートベルトを外した七海と悟は同時に車のドアを開けたので、私もドアを開ける。
その路上、呪い達にまぎれて人間がひとり居た。私を見ている。それは私が一番良く知っている人物。
家族の一人の父親だ。
「ハルカ?」
呪いが見えないんだろうな、と思うけれど周りに居るのに平然としている。
今日は長距離運転の仕事が休みできっとぐっすり眠って、いつも休日にする外で体をほぐしていたんだろう。ガタイの良い体で腰に手を充てこちらを見る父親周りの呪いは、近い位置の父親ではなくこちらしか見えてないレベルで近付いてる。
『……父ちゃん、とりあえず家ン中入ってなよ』
悟ほどじゃない、お気に入りのサングラスを掛けて立つ姿はパッと見ヤクザだ。
父親は私を見た後に悟と七海を見て、固まる。
「ハルカ、母ちゃん泣くぞ?俺ァな……悟君が真面目な男だからってなぁ…でもまさかそっちの、ヤクザの情婦なんて俺は許さんからなっ!?」
『何言っちゃってんの!?セコム妄想ストップ!冷静になって?』
形の崩れがちな呪いや、クリーチャーのような呪いがこちらにやってくるけれど、奥で涙を流していそうな父親の子分のように見えてしまう。
その状況を作り上げたのはおそらく、背後の車。そして七海。いや、ふつうに七海さん真面目な人に見えるけれど、状況が父親をそう見えさせているんだろう。悟も居るし。