第18章 美術品のように愛でないで
悟に気を遣われ過ぎて困って居ること、今まで通りに普通に愛して欲しいという事。
恐れずに手抜きをしないで稽古もして欲しい事。それらを綺麗に簡潔に纏めて悟に全てを伝えてしまった。
組んでた腕を解き、うわっ…本人に言われてしまった……と私は片手を額に当てる。都合よく熱とか出して倒れないかな…気絶でも良い。気絶は"負"じゃないか。
ああ、風邪引いた時式髪で吸えば良かった…!
「──そういう事なんだよ、悟。君が我慢をするのは結果的に彼女を不安にさせて逆に傷付けてたんだよ。だからこうしてずっと彼女は悩み続けてたんだ」
信じられないって表情の悟はゆっくりと首を振った。
「んなワケ、ねえだろ……っ!絶対、嘘だ!そういう事言って俺を誤魔化して浮気を隠蔽しようって…!」
『まだ疑ってんの?いくらなんでも頑固すぎるでしょ…、なーにが天才なんだか…』
これでもまだ疑ってんならもう、実力行使するしかない。
決心して私は悟へと近付く、悟は近付く私にほんの少しだけ後退りして警戒していた。
『……手、』
「んだよ……腕とか切り落とすつもり?」
なかなか私へと出さない手を掴み、その手首をそっと腹部側から…インナーの下から服の中へと突っ込ませた。
その間じっと悟の顔を見上げれば少し躊躇ったような表情の後にハッ!と目を見開く顔になった。
「ハルカっ!?君は一体何をやってんだっ!?」
背後で焦る傑の声が聞こえる。そりゃあ急に服の中に手を突っ込ませたら驚くもんね。その反応は正しい。
服の中に突っ込ませた大きな手はむにっ、と一度恐れながらも揉む。手の動きはそれ以上揉むことも手を広げる事も無くそこで固まった。指と指の間に乳首が挟まって少し擦れた後の硬直だった。
悟の表情はもはや"無"となってる。
まるで意識が宇宙にでもトんでしまったかのような……。スペースキャッツ……。
その悟に耳は正常に働いてるだろうと、追い打ちを掛けることにした。