第18章 美術品のように愛でないで
『ん、分かった一度私も冷静になります。
なんでヤッてる前提の話なのか分かんない、こっちの椅子座れば?』
「冷静の意味君知ってるよね……??」
知ってますよ、冷静くらい。今の私の心はちょっとだけ凪いでますって、傑さん?
カラカラカラ…とややゆっくりと回転して悟の方向に行く椅子は悟の手前で止まる。いや、止まるというよりも無限で止まってるように見えている。
鼻でふん!と笑った悟は舌を出した。
「傑にぶち込まれてるオマエが座った、尻軽女の椅子とかマジ勘弁」
「君達面倒くさいなっ!……私が座って椅子に座ったらどうだい、悟?」
「あ?穴兄弟の椅子に座れって言いてえの?」
『……じゃあ立ってろっ!』
超わからず屋になってる悟。これは口で言っても理解してくれないんじゃないの?
頭を押さえる傑が小さく、「どうしてこうなるのかなー…」と困ったように呟いてる。それは私も同意見なんだけれど。そもそもの解決方法である悟が聞く耳を持ってないんだもの、しょうがない。
全員が微妙な距離感を取ったままに、立った状態で会議が始まった。
悟がじーっと私を見てる。思わず『何?』とその視線に反射的に零してしまった。
そしたら小馬鹿にする態度で鼻で笑い口元に笑みを浮かべてる。
「オマエは座ってれば?ヤッた後疲れた動けなーい!っていつも言ってるだろ。でけえ乳とケツ持ってんだから椅子に乗せとけよ」
……はあ?
冷静であろうとするなかで着火しようとするのは悟だった。人の情事の事を他の人の前で晒すとかありえない。イラッとくる。
…なにそれ。随分としてないクセに。口ではそういう事平気で言って……私の事は大切だとか言ってた傑のアドバイスが少しばかり嘘に感じてしまって。
『ヤッてねえっつってんでしょ、このED野郎っ!』
声を上げると「しーっ!」と慌てて声を上げる傑。
「声っ、声気を付けてよ!?あー…もう…、私はもう、帰りたいよ……どうしてこんな修羅場になってしまったんだ…!」
この現場に居合わせる傑が心底可哀想だと思うけれどもう帰っていいよって雰囲気じゃない。
悟が「はぁー!?」と驚きながら私や傑のように大きな声を上げた。