第18章 美術品のように愛でないで
叩きつけた手はドアに触れたまま。悟の手からドアの素材…、木材や塗装が上下にひび割れてる。
「ハルカだってそうだろ!?傑と同罪だ、オマエはもう俺のモンって事になってんのに何簡単に傑に股開いてんの?俺じゃ物足りないって事?あんなに俺の事咥え込んでいっぱい注ぎ込んでも足りないからってなんで他の男の味を求めてんだよ!?」
ここまで感情的になる悟は初めてで驚いた。
怒りをぶつけるように叫んだ後に項垂れ、悟はドアに触れてた手で顔を隠して…。
「……何傑に落ちてんだよ、オマエ。俺じゃなくて傑の子供でも托卵されたいの?」
それは絶望したような、絞り出すような悲しい声だった。
『……悟、』
手を退かし、顔を上げた彼はそのまま傑を見る。
つかつかと傑へと歩み寄って胸ぐらを掴んだ。傑はただされるがままだけれど、荒れる悟を相手にしてもとても冷静なまま。
「断片的な部分だけ拾って勘違いは止めなよ、悟。そういうのは良くないって前から言ってるだろ。きちんと本当の事を知る前に行動は聡明じゃない」
「俺は初めっから聡明的ですけど?
何、断片的?見たまんま、オマエらの行動全部が物語ってんだろ!?下着の話して、抱き合って、診察用のベッドは荒れてる、ヤリまくってた後だろーが!いいよなー、俺がしてないからってハルカに中出ししまくってさ!こいつの腹への種蒔き楽しかったか!?」
怒り狂う悟の言葉に視線をふたりからベッドへと移した。
……。
診察用のベッドのシーツは確かに乱れてる。でもそれは傑が来るよりも前に来てた治療対象のひとりが、椅子がないからそこに座って待ってもらってたってだけで。だから私でも傑でもない人が座ってた後のシワだった。
……なんでこう変に解釈しちゃうのかなー、とだんだんと呆れつつ頭を掻いた。そもそも冷や汗をかく事もない、だって浮気をしてないのは事実なのだし。
傑は随分と冷静に、悟にあの状況をしっかりと説明してる。
「……私はハルカの話し相手になってただけだよ。そう感情的になるなよ、天才最強の五条悟が聞いて呆れるね?」
……あ、傑ももしや冷静でない?ちょっと怒りを感じる、ちくりとした言葉。火に油を注いでる。