第18章 美術品のように愛でないで
『そんな…っ、そんな事、初めから言ってくれれば…っ!』
もっと早く言ってくれれば、余計な心配だと言えた。スズメが早朝に鳴くまで抱き潰す男が今更壊したくないとか都合の良すぎる心配ばっかして!変に心配をして悟を疑っちゃったじゃない!
足先で床を手繰り寄せるように椅子に座ったまま私に近付く傑。私の髪を、頭を…ぽんぽん、と優しく撫でた。
「君を傷付けたくないって臆病になってるんだ、悟にしては珍しいよね。臆病とは無縁の男だと思ってたのにさ。ハルカならきっと、悟とよく話し合えば和解出来ると思うよ。抱く事も稽古も、普通にして欲しいって。
今まで通りに愛して欲しいって」
『す、すぐる、さん…っ!』
ばすっ、と肩を貸して貰い顔を埋めて嗚咽を上げてしばらく泣いた。暖かくて大きな手が優しく何度も私の背を撫でる。
抱えていた悩みを吐き出し、そのきちんとした回答を貰ってとても安心した。
涙もだいぶ落ち着いて、顔を埋めたままに一度鼻を啜って。
「──だいぶ落ち着いてきた?」
『……はい。相談、ありがとうございます傑さん。帰ったら良く話し合ってみます。抱くならうじうじしてないでさっさと抱けって』
ふんす、と意気込む。そんな私に苦笑いをしてる傑はやさしく頭を、髪が乱れないように撫でてる。
「君って結構大胆なんだね……。
まあ、悟の事だし、勃起障害とは無縁だと思うよ、生涯現役っぽいよね。それこそおじいさんになってもまだまだイケる!だとかさ」
ははは、と傑の乾いた笑い声を聞き思わず笑顔になった。なんだ、それ。ばあさんになってもそんな悟を相手しろって事?そこまで下半身強靭じゃないんだけれど、私。