第18章 美術品のように愛でないで
思い出せば手加減されまくりで。もはや舐めプですか?というレベル。いつものおふざけかな、と思うこともあった。他の生徒との対応の格差が激しく、学生じゃなかったからとか、一般人だったからとか思っていたけれど虎杖はツカモトから呪力の調整を学んだらしい。私にはハードだっていってたのを虎杖は初めからそれでいってる。
私は2号…安定した呪力が流されないと擦りつくコアラだなんて、よく考えれば相当手加減というか舐められていた。ぬいぐるみを与えられた幼女じゃないんだぞ、いい加減にして欲しい、こちとら成人してるんだ。だから正気か?って感じであの時学長にも確認されてたんだ…。
稽古は初めから手加減されていていつも本気で相手してくれない。最初から最近まで。
傑の言葉に深く頷けば彼はため息を吐いた。
「リベルタのボスや構成員が逃げ出し君のお婆さんが亡くなったあの時、確かに君は生死の境目に居た。悟は相当焦ってたよ、君を失いたくなくて。
私は硝子や悟自身に聞いたんだけれど。ハルカが目を覚ました時、悟が無我夢中で君を抱きしめたらしいね…その事を覚えてるかな?」
あの骨が軋むほどに強い力の事を私は忘れない。
あんなにも強い力で、硝子が来なかったら怪我をしていた可能性があった。硝子は殺す気か!とも言っていたけれど。
『……いつもと違う悟でした、あの時のは痛くて苦しくて…』
「そう……だからね。以前よりも強くなれた分、とても死にやすくなってしまったハルカを壊してしまうんじゃないかって悟は自分に怯えているんだ。
今までにここまで人を愛した事がないんだろうね。本気で君を愛してしまって、今まではきちんとその感情をコントロールしていたのに、その時ばかりはコントロール出来なかった。暴走した。天才・最強と謳われる五条悟という男が大きなミスをしてしまった。
愛しすぎるあまりに、大切な君を自分のせいで殺してしまったら……だなんて。
……死なせたくないからって遠くから愛でるだけじゃ、ちっとも心は伝わらないのにね?」
なんだ。そんな事だったんだ。
滲み、水没する世界、ぽろりと頬を滑り落ちていく雫。