第18章 美術品のように愛でないで
もうひとつの疑惑。それを口に出すのを躊躇ってる。どうするか、いや本人の状態もあるけれど同年齢にも起こりうるかもしれない。
泳がせた視線を傑に移せば心配そうな表情。私はそんな彼に向かってゆっくりと口を開く。
『傑さんにちょっと質問したいんですけれど……』
「ん?なんだい?私に答えられるものならなんでもどうぞ」
ふんわりと微笑む彼に恥ずかしさを感じながら質問した。
『……その、悟と傑さんはタメの…28歳…、20代後半ですよね?えっち、じゃなくて…セックスとかって普通に今でも出来ます?』
「ぶっ!?……急になんだいっ!?何を言い出すんだ、君はっ!?」
少し赤くなって驚く傑。片手で口元を隠し、僅かに俯いた後に手を退かして私をまじまじと見る。
「……年上の男にそう迫るだなんて君はいけない子だね。その気じゃなくてもその気になっちゃうじゃないか……っ」
『……は?』
急に何か言い出したぞ、夏油傑。
キリッ、とした表情に変わり少し頬を赤らめている、袈裟を着た男。
「そういう事をする為の医務室ではないんだけれどね…まあ、個室もある。その、親友の妻を寝取る趣味は私にはないのだけれど、君は私に抱かれたいって事で良いのかな?ハルカの奥深くで私を知りたいっていう……そういう事、なんだろ?私とそういう禁断の関係になりたいって…」
『何変なこと期待してんですか。別に私、傑さんを誘ってるわけじゃないですから。悟と同年齢で性欲が未だにあるかどうかを聞きたかったんですって。
……それに悟以外とはしませんよ、私。浮気はしたくないです』
モロに言ってしまって恥ずかしい。その恥ずかしさをごまかすようにちょっとだけ、勘違いしてる傑を睨む。でもやっぱり恥ずかしさが勝って傑から視線を外すと視界の外で「ソッカー!」という傑の声が聞こえた。
質問の最中だった、と傑の顔を無理に見る。気まずい表情をしててちょっと笑った。
「私に抱かれたいのかと勘違いしてしまったよ……。
あー…うん、質問ね。流石に私も男だ、性欲自体はあるよ?けれどやっぱり10代後半から20代くらいのあの始まったら止まらない無限大な底力は、」
『アッそこまでは良いです。深入りはしないんで結構!思い出に蓋をして下さーい』
「君ねー……そういう所が悟に似たなにかだと思うんだけど?」