第18章 美術品のように愛でないで
ふんわりとした落ち着く雰囲気を纏っている。
……なーんか。色々対照的だよな、悟と傑って。机に手を伸ばしてコーヒーを手に取る。そっと少量口にしながら、悟と正反対の存在と何を話そう?って考えて。
にこ、と笑って話を切り出したのは傑。
「最近悟とはどう?上手くやれてる?」
『……傑さんって私と会う度それ聞いてきません?』
一瞬真顔になった傑。ちょっと悩んで困った様にふにゃりと笑った。
「そう、なのかな?ははっ……無意識だったよ。私は昔から悟の事を知ってるからね、あんな男とずっと一緒にいる君は大丈夫なのかなって心配なんだよ」
『ははは……そういえば、硝子さんにも最近どうだって時々聞かれますわ…悟、色々と問題アリですからねー…』
……。
この人の雰囲気は安心して色々と曝け出してしまいそうになる。
例えば、今抱えている問題とか。
「……何か上手く行かない事あったのかな?」
顔に出てたのか、返事とは言えない曖昧な言葉だったからか。
両膝に手を置きながら、少しだけ私側に前傾姿勢で顔を覗き込むキリッとした顔の男。
うーん、やはり話を聞いてもらうのが一番か。残り少ないコーヒーを一気に呷り、傑を見ながら机に空っぽのマグカップをコト、と置いた。
『傑さん。ここ1ヶ月くらいの間、悟に、その……女の人と遊んでる気配だとか噂を聞いたとかってあります?』
急に眉間に皺を寄せて姿勢を正す傑。首を横に振った。
「そんなわけないじゃないか。悟は私と会っても口を開けば嫁自慢。ハルカハルカと連呼しているよ?現実にミュートワード設定出来たら間違いなく君の名前を設定してたかも、だ。ずーっと君の話をするもんだから山での任務じゃ熊よけ鈴すら要らないくらいだよ」
『……まっさかー?』
「いや、本当だとも。最近だと一昨日かな。嫁自慢中は表情もだらしなく鼻の下も伸ばしてさ。相当絆されてるね……
だから君以外の女性に今はちょっかいを出すことは絶対に無いと私は言い切りたい所だけれど……そう思うような何かがあったのかい?」
スン…、と真顔になった。悟は私を好きでいてくれてる。それは安心だし、心の中の不安のチェックシートがひとつ消される。完全に白じゃないけれど。証拠がないってだけでさ…。