第18章 美術品のように愛でないで
休みになって急に入った任務も海外にどうしても行かないといけない場合だってめちゃくちゃ駄々こねて早めに帰って来るけれど。無理に急げば身体に負担がありそうでそこはゆっくりしてついでに観光でもすれば良いのに、「ハルカに会いたかったから早く帰って来ちゃった!」はないでしょ……。
思い返せば、昨晩疑った考えをしてたのが失礼にも思えてきて。
昨夜ちゃんと寝たはずだけどなぁ…、なんだかいまいち満たされてない。
手を伸ばし、硝子のコーヒーをひとり分だけマグカップに淹れる。普段コーヒーを飲む時はミルクたっぷり派だけれど今は眠気を飛ばしたいからそのままで良いや。静かな医務室、お湯を注ぐ音やケトルを置く小さな音が大きく聞こえた。
眠気覚ましの熱めのコーヒー片手に書類を仕上げてその紙をしまう。後で印刷用紙貰いに備品庫に行かないとなー…めんどくせ!と背もたれに寄り掛かるとギシッ、と軋む椅子。くるくる回るので、少し左右に往復させながらブレイクタイムをしていると、コンコン、とドアが叩かれた。
ちょっとコーヒーを口に含んでる最中でちょっと咽かけながら、カップを机に置く。ちょっと遊んでる所に襲撃だ、見つからないように椅子を動かして回すのを止め、ドア方向を見る。誰だろ、怪我人かな?
『はーい』
ガラ、と向こうから開けて入って来るのは怪我人なんかじゃない。そこにいるのは袈裟を着た傑。
おっ、と私が居るのを確認したら柔らかな表情で笑う彼。
「ああ、やっぱり。電気が着いて居たからね、硝子しばらく休みだしハルカが居るのかな?と覗いてみたんだよ。
今は手が空いているのかな?ちょっとお邪魔するよ」
ひとりで入ってきた傑、誰も座っていない空いた椅子を私が指すとそこに彼は座った。
『書類も終わったし、淹れたコーヒー飲むまではって居たんですけれど……コーヒー淹れます?』
「いや、結構。別に気を遣わなくて良いよ。任務の報告帰りでね、ちょっとお話でもしようかなって立ち寄っただけだからさ」